作業療法士の仕事内容とは?作業療法士をもっと知りたいあなたへ
作業療法士の仕事内容についてご紹介!作業療法士という職種について、またリハビリで作業療法士が担う仕事について、それぞれの目的別に詳しく解説しています。
更新日:2023年04月06日
公開日:2021年01月19日

国家資格として1965年に誕生した作業療法士は、リハビリに従事する職種として年々需要が高まっている職種のひとつです。
毎年約5,000人と多くの人が作業療法士の資格を取得し、全国の作業療法士数は90,000人以上(※)にものぼります。(※令和2年時点での総人数)
しかし、医療に携わる人でなければ「具体的な作業療法士の仕事内容は?」と聞かれても、いったいどのような仕事をしているのか分からない人も多いはず。
ですが、これからの医療や福祉を支える職種として、作業療法士がどのような役割を持って仕事をしているのか知りたい人も多いのではないでしょうか。
そこで、当コラムでは作業療法士の仕事内容について詳しくご紹介していきます。
将来作業療法士になりたい、また作業療法士の仕事に興味があるという方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
作業療法士とは
作業療法士とは、手や指先の細かい応用動作と社会適応のための能力回復を専門とするリハビリのスペシャリストです。作業療法士は、「食事をする」「顔を洗う」「歯を磨く」「料理をする」「字を書く」といった生活に必要不可欠な応対動作の回復とそれに伴う心の健康を養うために、「作業療法」と呼ばれる治療法を用いてリハビリを行います。
「作業療法」とは、心身に障がいがある方に対し治療手段としてさまざまな“作業”を用いる療法のことをいいます。
作業と聞くと手縫いなどの細かい作業を想像してしまいがちですが、作業療法における作業とは、食事や着替えといった身の回りの活動をはじめ、家事や仕事、余暇活動などで、日常生活に関わるすべての諸活動のことを指します。
なお、理学療法士及び作業療法士法において定義されている作業療法士は、“厚生労働大臣の免許を受けて、作業療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、作業療法を行うことを業とする者”で、作業療法の定義は“身体又は精神に障害のある者に対し、主にとしてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工芸その他の作業を行わせること”とあります。
作業療法の対象となる人は、生まれながらの障がいや病気や怪我、精神、高齢による障がいなどがある人で、作業療法士は精神分野におけるリハビリも担います。
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作業療法士の仕事内容
作業療法士が行うリハビリの目的は、「基本的動作能力」「応用的動作能力」「社会的適用能力」の3つの能力の維持・改善で、“その人らしい生き方”を支援するという考えに基づています。そのため、医療や福祉、保健などさまざまな領域における作業療法士の仕事内容は変わりますが、「自分らしく生きる」という生きがい支援の考えは共通しています。
そのうえで、作業療法士は対象者となる人の症状や置かれている環境、本人の希望に合わせて適切なリハビリプログラムを作成し、対象者に寄り添ったケアが求められます。
では、具体的な作業療法士の仕事内容にはどのようなことが挙げられるのか、それぞれのリハビリの目的別に詳しくみていきましょう。
基本的動作能力
基本的動作能力の改善・向上を目的としたリハビリでは、病気の後遺症などにより手足に麻痺が残るなどの症状がある人に対し、運動、感覚、知覚、心肺、精神、認知機能などの改善・向上を目指した治療や指導、訓練を実施します。具体的には、準備運動を含む物理的感覚運動刺激やトランポリン、体操など運動療法のほか、レクリエーションを通して豊かな感受性を身につけるといった内容などが挙げられます。
応用的動作能力
基本的動作の獲得と並行しながら、作業療法士は食事や着衣、トイレ、起立や移動、家事といった日常の動作を行うために必要な身辺動作や家事動作などの訓練を行います。また、その人らしい豊かな生活を送るための支援として、手芸や工芸、編み物、塗り絵といった趣味を取り入れた作業をリハビリプログラムに取り入れるほか、退院に向けた住環境の調整、福祉用具の作成やアドバイス、火の元や施錠、金銭の管理といった日常生活への復帰に向けた支援も行います。
社会的適応能力
作業療法士は身体と心に対するリハビリを行うため、地域活動への参加や就労・就学をするうえで必要となる社会的適応能力の改善・向上を目指した訓練も大切な仕事内容のひとつとなります。具体的な指導、訓練内容には、対人交流の訓練や公共交通機関の利用やパソコンの操作、文字を書く、計算をする、生活圏を拡大させるための外出活動などが挙げられ、それぞれの対象者の生活や環境に沿った指導や訓練を行います。
作業療法士として働く場所
作業療法士として働く場所は、主に医療・福祉・保健・教育・職業に関連する施設です。作業療法士は、障がいがある人の機能回復だけでなくその人らしく生きるためのサポートも行うため、活動領域は多岐にわたります。
また、高齢化が進むなか認知症への理解も深まっていることから、心身どちらの面でもアプローチができる作業療法士の需要はますます拡大しています。
最近では、高齢化によって地域による包括的なケアが求められる地域医療や、認知症や精神疾患への理解が深まっている精神分野での需要が高くなっており、作業療法士としての専門性を活かした働きはあらゆる分野で求められています。
■作業療法士の就業先
医療 | 総合病院、整形外科病院、脳神経外科病院、リハビリテーション病院、大学病院、精神科病院、メンタルクリニック、認知症専門病院、小児病院、訪問リハビリテーションセンター など |
---|---|
福祉 | 介護老人福祉施設、特別養護老人ホーム、認知症高齢者グループホーム、身体障がい者福祉施設、福祉型児童発達支援センター、在宅介護支援センター、精神障がい者支援センター、福祉型障害児入所施設、児童発達支援事業所、更生相談所 など |
保健 | 保健所、保健センター など |
教育 | 保育所、幼稚園、養護学校、特別支援学校 など |
職業 | 公共職業安定所(ハローワーク)、地域障がい者職業センター、職業訓練施設 など |
まとめ
リハビリに従事する職種のひとつである作業療法士は、日常生活や環境に焦点をあてて身体と心の健康をサポートする、いわば『生きがい支援のエキスパート』。生きるうえで必要となる食事や排泄、入浴、買い物、家事といった身の回りの諸活動をはじめ、就学、就労に関わる支援を行うということは、人の人生に寄り添う職種といってもいいかもしれません。
病気や怪我だけでなく生まれつきの障がいや後遺症による障がい、また就労や就学に不自由を抱えている人など、作業療法士によるケアを必要としている人は年々増加傾向にあります。
医療分野にとどまらず福祉や保健、教育などあらゆる分野で活躍している作業療法士は、今後も需要が高まる職種のひとつとして注目されており、社会的に見ても信頼性のある職種といえるでしょう。
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