小児領域の言語聴覚士が知っておきたいPECSの話

PECS(ぺクス)とは絵カード交換式コミュニケーションシステムです。

2019.03.27

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言語聴覚士小児イメージ


突然ですがPECS (Picture Exchange Communication System)というものはご存知でしょうか?
PECSとは「絵カード交換式コミュニケーションシステム」の略で独特なコミュニケーションの手法を取ります。
これを使いこなせるようになることで非言語の子どもでも周囲とコミュニケーションが行えるようになります。
では言語聴覚士としてどのような関わりをすれば良いのでしょうか。

小児の言語聴覚士が行うリハの目的

子どもが絵を描いている


言語聴覚士が小児領域で発達障がい児や知的障がい児、その他言語障害や聴覚障がい児のリハビリを行う目的は何でしょうか。
それは言葉の発達を促すことと、コミュニケーションが取れるようになることです。
もちろん「話す」ことができるようになるということは大切なことかもしれませんが、極論を言えば相手に“伝える”ことができること、伝えたいことがきちんと相手に”伝わる”こと。
それができればそれは立派なコミュニケーションなのです。
話すことを目標にするのではなく、コミュニケーションが取れるようになることを目標にすることでその子にあったコミュニケーションの方法を見つけてあげるのも言語聴覚士のお仕事でしょう。

PECSの導入

子どもにご飯を食べさせている


PECSは応用行動分析学に基づいて、フェーズI(絵カードの交換)フェーズII(距離の拡大)フェーズIII(絵カードの分別)フェーズIV(文の構成:「○○ください」)フェーズV(質問への応答:「何がほしい?」に文で答える)フェーズVI(コメント「○○が見えます」)といった6つのフェイズ(指導段階)で構成されています。
第一段階はカードが交換できるようになることです。
第二段階はそのカードを渡す距離を広げること。
ここまでは訓練なしでできるお子さんもいらっしゃるかもしれないのでその子の特性に合った段階からはじめてもかまいません。
そしてフェーズIIIの絵カードの分別に関しては、最初はその子の好きなものではじめると良いでしょう。
たとえば好きなお菓子やおもちゃの写真を用意し、その写真をコミュニケーション相手に渡すことができたらごほうびとして同じものがもらえる。
写真を渡すと写真に写っているものと同じものがもらえることでそれがコミュニケーションの成功体験となっていきます。
それができるようになったら違う写真や絵カードを混ぜて複数のカードの中から自分の好みのカードを選択することができることが次の目標です。
それができるようになると次は2語文です。それまでのカードに「ください」を選択できるように促し、「○○ください」と言ったようにどんどんコミュニケーションを拡げていきます。デラウェア州ではこのPECSを導入することで言葉の発達が促され、PECSを1年以上使った子どものうち約52%に自律的な言葉が発達しPECSを使用せずともコミュニケーションが取れるようになったとの報告があります。
また21%の子どもがPECSを使用しながら言葉を話すようになったとも報告されています。
PECSは早期療育に有効であるということがデータとして裏付けされています。
(参考文献:伊藤玲・松下浩之・園山繁樹(2011)自閉性障害児に対するPECSを用いたコミュニケーション指導)

実は小児だけじゃない言語聴覚士のPECSの使い方

子どもとリハビリテーションを行っている


ここまでは子どもに向けたPECSの使用についてお伝えしてきました。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、実はPECSが使えるのは子どもだけではありません。
高次脳機能障がいや失語症の方などにもPECSは効果を発揮します。
PECSの良いところは全年齢に使用することができ、マイナスの作用がないということなのです。
またインターネット技術の発達によりiosではPECSのアプリなども販売されています。
デジタル機器を使用した方が円滑に導入できる場合もあるので患者さんの年齢や背景によってはデジタル版のPECSを取り入れる方がスムーズかもしれません。

まとめ

言語聴覚士が知っておきたいPECSについてお伝えしてきました。
PECSとは

・絵カード交換式コミュニケーションシステム
・障がい児のみならず全年齢に使用できる
・PECSを使うことによって将来的にPECSを使用せずにコミュニケーションが取れるようになることがある

ということを知っていただくことはできたでしょうか?
知的障がい児や発達障がい児の早期療育に、高次脳機能障がいや失語症のリハビリに、積極的に取り入れてみませんか。

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