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廃用症候群とはどんな障害?引き起こされる症状とその対策をご紹介

廃用症候群とはどんな障害?引き起こされる症状とその対策をご紹介

更新日:2023年02月22日

公開日:2023年02月22日

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介助するスタッフと患者さん

高齢になった親の外出頻度が少なくなり、ベッドで寝ている時間が増えると、身体面が心配になる方は多いと思います。活動量が減少すると、徐々に「廃用症候群」が進み、身体にさまざまな悪影響をおよぼす危険性があります。廃用症候群を改善・予防するには、運動習慣の定着や十分な栄養の摂取が重要です。この記事では、廃用症候群の症状やその対策についてご紹介します。「うちの親は廃用症候群なのではないか?」と不安に感じている方にぜひ見てもらいたいです。

廃用症候群とは?

スタッフと患者さん

廃用症候群とは、身体を動かさなかったり、長時間安静でいたりすることで生じる障害の総称です。 別名「生活不活発病」とも呼ばれており、介護が必要になった高齢者や病気で寝たきりになった方に起こりやすいのが特徴です。

加齢によって生じるものではないため、若者でも事故や病気で寝たきりになれば、同じように障害が現れます。 また一度廃用症候群になると回復に時間がかかり、健康寿命にも大きな影響をおよぼすので、予防面に力を入れることが重要です。

廃用症候群の原因

横になっている男性

廃用症候群になるきっかけには、どのようなものがあるのでしょうか。ここではその原因について解説します。

長期の寝たきり・安静状態

第一に考えられるのは、寝たきりや安静状態が長期間続くことです。とくに高齢者は、加齢や病気によって身体機能が低下すると、寝たきり状態になるケースが多いといえます。もともと筋力・体力が低下している状態で廃用症候群が進むと、さらなる身体機能の悪化につながるでしょう。

また年齢が若くても、安静状態が続くと廃用症候群のリスクが高まります。とくにケガによる入院で安静の時間が増えたり、骨折によるギプス固定で身体の一部を動かせなかったりするときには注意が必要です。

環境による問題

環境の問題がきっかけで廃用症候群になるケースもあります。たとえば、外出の際に階段や大きな段差を上り下りする必要がある自宅環境だとしましょう。加齢によって身体機能が低下すると、階段・段差の上り下りがむずかしくなり、生活範囲が狭くなります。

生活範囲が狭くなることで活動量も少なくなり、やがて廃用症候群が進行する危険性が高まるです。このように、身体機能の低下によるものだけでなく、外部環境にも関係があるのです。

廃用症候群の症状

車いすと布団

廃用症候群になると、どのような症状が現れるのでしょう。ここでは症状を、各器官に分けて解説します。

筋肉・関節の症状

筋肉・関節の症状では、以下のような影響が現れます。

●     筋力低下
●     関節拘縮
●     骨密度の減少 など

このように、身体を支えるための筋肉や骨が弱くなってしまうのです。安静状態が1日続くと筋力が1〜3%、3〜5週間続くと約50%も低下するといわれています。さらに20週ほど安静状態が続くと骨密度は30〜50%減少するという報告もあります。筋力・骨密度が低下すると活動量も少なくなり、さらなる悪循環におちいる危険性があるでしょう。

循環器の症状

循環器に関係する影響は以下のとおりです。

●     心機能の低下
●     起立性低血圧
●     静脈血栓症 など

安静状態が続くと心臓の機能が低下し、体力が落ちて脱力感・疲れやすさにつながります。さらに血流の循環が悪くなるので、起立性低血圧によってめまいや失神を引き起こします。その他にも血流が停滞して足に血栓ができると、命の危機にも関わる静脈血栓症を引き起こす危険性もあるでしょう。

呼吸の症状

呼吸の症状には以下のような病態が現れます。

●     換気障害
●     誤嚥性肺炎 など

安静状態により呼吸時に必要な筋力が低下すると、空気の入れ替えがむずかしくなります。 筋力低下によって、食べ物や唾液が気管に入ったときのむせ込みの勢いが弱くなり、誤嚥性肺炎になるリスクも高まります。

消化器の症状

活動量の減少で、消化器官である胃腸の活動も低下して食欲の減衰、便秘などの症状が現れます。食欲の低下で食事量が減ると、十分な栄養を摂取できなくなり、筋肉・骨の萎縮につながります。安静による筋力・骨密度の低下もあいまって、さらに身体状況が悪化してしまうのです。

泌尿器の症状

泌尿器に関係した症状は以下のとおりです。

●     排尿障害
●     尿路結石
●     尿路感染症 など

安静によって骨密度が低下すると血液や尿にカルシウムが蓄積されるため、尿路結石が生じやすくなります。尿路結石は激しい痛みを生じる疾患でもあるので、石が生成されないように水分を摂取することが大切です。また尿が膀胱や尿道に溜まると、尿路感染症の原因にもなります。

皮膚の症状

皮膚の症状で気をつけたいのが「褥瘡(床ずれ)」です。褥瘡は身体の同じ部位が長時間圧迫されることで血流が悪くなり、やがて皮膚が壊死してしまう症状です。お尻や肩など、骨が突き出ている部位が褥瘡になりやすく、とくに長時間同じ姿勢でいる方は気をつけなければいけません。褥瘡を予防するためには、定期的に姿勢を変えたり、寝たきりそのものを改善したりする必要があります。

またこれらの症状の他にも、抑うつやせん妄、認知症などの精神的な疾患リスクを抱える可能性もあります。このように、廃用症候群の症状は非常に幅広く、全身にさまざまな影響があるのです。

廃用症候群の診断

診察する医師と患者さん

廃用症候群はさまざまな症状が現れることもあり、的確に診断しにくいのが特徴です。たとえば、認知症も同時に発症していたとします。この場合、廃用症候群によって認知症を発症したのか、あるいはその逆なのかが判別できません。そのため、これまでの経緯や現状の身体状況について家族・本人と聴取したうえで、廃用症候群であるかどうかを判断します。

廃用症候群が進行するほど合併症が増えて診断がむずかしくなるので、少しでもおかしいと思ったら早めに医療機関で診断してもらいましょう。

廃用症候群になったときの治療法

介助をするスタッフと女性

廃用症候群と診断されたら、どのような対処が必要なのでしょうか。ここではおもな治療法について解説します。

運動の機会を作る

最も大切なことは、運動の機会を作ることです。寝たきり・長時間の安静は廃用症候群を助長するので、まずは身体を動かす必要があります。ウォーキングや趣味活動などの運動を行えば、筋力や体力の維持・改善につながります。

また運動以外にも家事やトイレなど、日常生活で身体を動かす機会を作るだけでも効果的です。少しでも身体を動かす習慣をつけて、日中は起きてもらうようにしましょう。

病院や施設でリハビリを行う

廃用症候群が進行しているようであれば、リハビリを受けるのもおすすめです。リハビリを受けられる病院に入院・通院したり、通所リハビリや訪問リハビリなどを利用したりして、廃用症候群の改善を目指しましょう。

このときに注意したいのが、本人がリハビリに対してどう思っているのかを聞くことです。運動のモチベーションが低い状態でリハビリを進めても、あまりいい効果は得られない可能性があります。

ムリにリハビリを行おうとしても、かえって拒否的になるケースもあるでしょう。なんのためにリハビリを行うのか、リハビリを続けるとどんな変化があるのかを伝えて、本人のモチベーションを引き出してみましょう。

栄養をしっかりと摂取する

廃用症候群の治療は運動だけでなく、食事による栄養の摂取も大切です。ここで重要なのが、1日の消費エネルギーと摂取エネルギーの確認です。食事を十分に行わないことで摂取エネルギー量が少なくなると、運動で増えた消費エネルギーの方が多くなる可能性があります。この状態では、かえって筋力や体力が低下する危険性があります。

運動を行うと同時に、栄養面もしっかりと管理しましょう。とくに筋肉を作るタンパク質は不足しがちなので、肉や魚、大豆製品といった食べ物は積極的に取り入れましょう。どんな栄養をとるべきか悩む場合は、一度医師にアドバイスを聞くといいでしょう。

薬物療法を行う

廃用症候群は、場合によっては薬物療法での治療も効果的です。薬物療法が効果的な症状としては、以下のようなものがあります。

●     関節痛
●     腰痛
●     抑うつ
●     睡眠障害 など

このような症状に薬物療法を活用すれば、活動量の増加につながります。たとえば、関節痛や腰痛が原因で動きたくない方であれば、鎮痛剤を服用すればその心配もなくなるでしょう。また抑うつによって意欲・やる気が低下している方に抗うつ薬を服用すれば、趣味活動や運動を再開するきっかけにもなります。

注意したいのが、自分や家族の判断だけで市販薬を使用しない点です。間違った薬を服用すると、症状の悪化につながる危険性があるので、必ず医療機関を受診して、医師がすすめる薬を使用しましょう。

廃用症候群を予防するポイント

ストレッチをする患者さんとスタッフ

一度廃用症候群になると、改善するまでに長い時間を要します。そのため、廃用症候群を予防することがなによりも大切です。ここでは、廃用症候群にならないためのポイントについて解説します。

不必要な介護はしない

廃用症候群の予防で重要なのが、不用意な介護をしないことです。親が心配だからといって、どんなことも手伝ってしまうと本人の活動量が減ってしまいます。つまり、必要以上の介護は親の廃用症候群を助長するきっかけになるのです。

しかし、どんなことも手伝わないでいると、転倒や事故につながります。介護するときは、以下のような分類を考えてみましょう。

●     本人だけで行えるもの
●     少しだけ介護が必要なもの
●     介護をするべきもの

このように整理しておけば、親の活動量と安全性を確保した適切な介護ができるでしょう。決して過介護にならないように、自分でできる範囲は行うように促しましょう。

介護サービスを活用する

廃用症候群の治療法でもご紹介しましたが、介護サービスを活用して通所リハビリ、訪問リハビリを行うのもおすすめです。通所リハビリは施設に通ってリハビリや食事を行えるサービスです。活動量を高められるだけでなく、他の人との交流も生まれるので、認知症の予防にもつながるでしょう。

訪問リハビリは理学療法士や作業療法士などのスタッフが自宅にうかがって、リハビリを行うサービスです。本人は外出する必要がないので、足腰が弱くて外に出られない方でもリハビリを受けられるのが訪問リハビリのメリットです。要支援・要介護の認定を受けていれば介護サービスを受けられるので、一度ケアマネージャーに相談してみましょう。

廃用症候群とフレイル・サルコペニアの違い

ハテナマークと老人の人形

廃用症候群の他にも「フレイル・サルコペニア」という言葉を耳にすることがあります。どれも同じような言葉だと思いがちですが、それぞれ異なる意味を持っているのはご存じでしょうか。ここでは廃用症候群とフレイル・サルコペニアの違いについて解説します。

フレイルは要介護状態の危険性がある状態

フレイルとは、加齢にともなって身体機能が低下し、要介護状態の危険性が高まった状態のことです。「Frailty(フレイルティ)」が語源とされており、日本語では「虚弱」や「老衰」などの意味があります。フレイルは健康と要介護状態の中間のような状態なので、健康寿命を伸ばすためも早期の予防が大切です。フレイルだと判断する基準には、以下のようなものがあります。

 
●     体重が減少している
●     疲れやすい
●     歩くスピードが低下している
●     握力が弱くなっている
●     活動量が減っている など

これらが当てはまるほど、フレイルの可能性が高くなります。上記の他にも、意欲や気力の低下といった精神的な変化もみられる場合もあります。フレイルを予防するポイントは廃用症候群と同様に、活動量を高めて寝たきりの状態にしないことです。

サルコペニアは加齢によって筋力が低下する現象

サルコペニアとは、加齢にともなって筋力が低下する現象です。サルコペニアは25〜30歳からはじまり、徐々に筋力の低下が進むといわれています。廃用症候群は身体のさまざまな器官に影響をおよぼしますが、サルコペニアは筋肉のみに関係するのが特徴です。サルコペニアが悪化すれば廃用症候群のリスクにもつながるため、運動習慣をつけて活動量を高める必要があります。

このように、フレイルとサルコペニアの概念は廃用症候群とは異なりますが、対策はどれも共通していることがわかります。

廃用症候群を理解して予防に努めよう

森の中を歩く老夫婦

廃用症候群はさまざまな身体症状を引き起こす障害でもあり、一度かかってしまうと改善には長い時間を要します。そのため、廃用症候群にならないように予防することが重要です。活動量を高めて廃用症候群を防ぐには、運動の機会を作るだけでなく、不必要な介護を行わないこともポイントです。いつまでも親に健康に過ごしてもらうためにも、廃用症候群を理解したうえで早めの対策を行いましょう。
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