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進行性核上性麻痺のリハビリと自宅で安全に過ごすためのポイントをご紹介

進行性核上性麻痺のリハビリと自宅で安全に過ごすためのポイントをご紹介

更新日:2023年08月31日

公開日:2023年08月17日

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トレーニングする男性

進行性核上性麻痺と診断されてリハビリが必要となったものの、どのような運動をすべきかわからない方もいるのではないでしょうか。進行性核上性麻痺は指定難病の1つで、身体が硬くなったり目が動きにくくなったりする症状が現れます。病気によって衰えていく身体機能を維持するためには、リハビリの継続が重要です。この記事では、進行性核上性麻痺のリハビリ内容や自宅で安全に過ごすためのポイントをご紹介します。どのようなリハビリをすべきかがわかれば、症状の悪化予防につながるでしょう。

進行性核上性麻痺とは

医師と患者

進行性核上性麻痺とはどのような疾患なのでしょうか。ここでは進行性核上性麻痺の概要について解説します。

進行性核上性麻痺は指定難病の神経変性疾患

進行性核上性麻痺とは脳の神経細胞が徐々に減少し、さまざま症状が現れるようになる指定難病の神経変性疾患です。疾患が進行するにつれて転びやすくなったり、食べ物が飲み込みにくくなったりなどの症状が現れます。 

同じ指定難病のパーキンソン病と似ている部分もありますが、比較すると薬による効果が効きにくく、症状が早く進行するのが特徴です。進行性核上性麻痺は50歳以上の方が発症しやすく、その確率は10万人に1人ほどだといわれています。 

進行性核上性麻痺の明確な原因はわかっていない

進行性核上性麻痺の明確な原因は分かっていません。しかし現在の有力な説としては、たんぱく質が変化した物質が神経細胞に蓄積されることで発症するといわれています。 一方で、進行性核上性麻痺は遺伝による発症は基本的にないとされているため、孤発性(遺伝以外の原因)の要素が強いとされています。

進行性核上性麻痺の症状

リハビリ

進行性核上性麻痺にはどのような症状が現れるのでしょうか。ここでは代表的な症状について解説します。

核上性眼球運動障害

核上性眼球運動障害とは、目を自由に動かせなくなる症状です。最初は上下方向の障害が現れはじめ、そこから徐々に左右にも目が動きにくくなります。進行性核上性麻痺になった初期にはこの障害がみられることはなく、2〜3年経過してから徐々に現れるといわれています。 目が動かなくなると周囲への注意が向きにくくなるため、転倒や障害物への接触によって転倒も起こりやすくるでしょう。

仮性球麻痺

仮性球麻痺とは喋りにくくなったり、食べ物を飲み込みにくくなったりする症状です。喋れたとしても呂律が回らない、同じ言葉を反復するなどの問題が現れ、意思疎通がしにくくなります。食べ物が飲み込みにくくなると誤嚥(むせ返り)の頻度が増えて、気管に異物が入って肺炎を引き起こす恐れもあります。やがて口から食べ物を摂るのがむずかしくなると、経管栄養や胃ろうが必要になるケースもあるでしょう。

ジストニア

ジストニアとは、体幹の筋肉を中心に硬くなってしまう症状です。筋肉が硬くなるのはパーキンソン病の症状と似ている部分がありますが、進行性核上性麻痺はジストニアによって首が徐々に後ろ側に反ってしまうのが特徴です。 

これは首まわりの筋肉が収縮することで頭部が後ろ側に引っ張られることが原因で起こります。首が後ろに反ってしまうと生活動作にも大きな支障が出るだけでなく、食べ物もうまく摂取ができなくなります。

パーキンソン症状

進行性核上性麻痺はパーキンソン病と同じような以下の症状も現れます。

●固縮
●振戦
●無動
●姿勢反射障害

固縮とは筋肉が硬くなることで、先ほど説明したジストニアに症状が似ています。振戦はじっとしているときに手が震える症状ですが、パーキンソン病ほど多い頻度で現れるわけではありません。無動では身体を動かしはじめるのがむずかしくなる症状で、立ったり歩いたりするのに時間がかかってしまいます。姿勢反射障害はバランスをとるのが困難となり、転倒しやすくなる症状です。

認知機能障害

進行性核上性麻痺が進行すると認知機能も障害されます。認知機能の低下によって、以下のような症状が現れます。

●物忘れがひどくなる
●考える時間が長くなる
●好きな趣味をしていても何も感じなくなる
●昔のことを忘れてしまう

物忘れをはじめとした認知症のような症状よりも、注意力・判断力が低下したり、急に言葉が出なくなったりすることが多いのが特徴です。このような注意力や認知力が低下すると予期せぬ転倒を引き起こす原因にもなるでしょう。認知機能障害が早期に現れている場合は、その後も症状が進むスピードが早くなる傾向にあります。

自律神経障害

進行性核上性麻痺は自律神経障害を引き起こします。自律神経には以下の2種類があり、それぞれがバランスよく働くことで身体の体調をコントロールしています。

●交感神経:活動するための神経
●副交感神経:リラックスするための神経

自律神経が乱れると出現しやすい症状は、以下の通りです。

●夜間頻尿
●尿意切迫感
●排尿障害
●便秘

これらの症状が現れると尿路感染症や腸閉塞などによって、さらに体調の悪化につながるので注意が必要です。

進行性核上性麻痺の治療方法

体操する男性

進行性核上性麻痺の治療は、基本的に「リハビリ」と「服薬治療」がメインです。ここではそれぞれの治療方法について詳しく解説します。

リハビリ

リハビリによって障害されている身体機能の維持・向上を図る方法です。進行性核上性麻痺の診療ガイドラインによると、症例数が少ないこともあり、リハビリに対しての明確なエビデンスがあるわけではないです。 しかし、硬くなった筋肉を緩めたり、衰えた筋力をつけたりするにはリハビリは欠かせないでしょう。

運動を行わずに進行性核上性麻痺が悪化すると、やがて寝たきり生活となる恐れもあります。動かないことによる廃用性症候群を予防するためにも、継続的なリハビリを行うことが大切です。

出典:進行性核上性麻痺(PSP)診療ガイドライン2020

服薬治療

服薬治療によって進行性核上性麻痺の症状の悪化防止を図ります。2023年5月の段階では、進行性核上性麻痺を根本的に改善できるような治療薬は見つかっていません。そのため、症状の緩和を目的として服薬治療を行います。おもに使用する治療薬は、以下のようなパーキンソン病やうつ病に関係したものです。

●ドパミン作用薬
●抗コリン薬
●抗うつ薬
●抗不安薬

このように、現れている症状にあわせた治療薬を服用しつつ、リハビリを実施します

進行性核上性麻痺の方のリハビリ内容

女性高齢者

進行性核上性麻痺に対してのリハビリとは、どのような内容なのでしょうか。ここでは自宅でできるリハビリ内容についてご紹介します。

ストレッチ

進行性核上性麻痺ではジストニアやパーキンソン症状などの影響によって筋肉が硬くなりやすいので、ストレッチで関節をほぐします。気軽にできるストレッチの内容は以下の通りです。

【頭・首の筋肉のストレッチ】

●頭を前後に倒す
●頭を左右に回す
●頭を左右に倒す

【体幹の筋肉のストレッチ】

●イスに座って身体を倒す
●腰を左右に回す
●両手を持ったまま腕を上げる

【足首の筋肉のストレッチ】

●立った状態でアキレス腱を伸ばす
●つま先を地面につけたまま足首をぐるぐる回す

ストレッチをするときは筋肉を伸ばした状態を10秒ほどキープし、ゆっくりと元に戻します。関節を回して筋肉をほぐすストレッチ方法では、ゆっくりとした間隔で10秒間動かし続けましょう。

筋力トレーニング

進行性核上性麻痺によって衰えた筋肉を鍛えるために、筋力トレーニングを行います。自宅でできる筋力トレーニングの内容は以下の通りです。

【膝を伸ばす運動】

1.イスに座る
2.片足の膝をゆっくりと伸ばす
3.伸ばしきったらゆっくりと下ろす
4.反対の膝をゆっくりと伸ばす
5.2〜4の手順を1回として、15回×2セット行う

【お尻を上げる運動】

1.あお向けの状態になって両膝を立てておく
2.お尻を締めるイメージで持ち上げる
3.ゆっくりとお尻を下ろす
4.2〜3の手順を1回として、10回×3セット行う

【足を上げる運動】

1.あお向けの状態で片膝を立てておく(もう片膝は伸ばしたまま)
2.伸ばした膝の状態のまま片膝の位置まで上げる
3.膝を伸ばしたままゆっくりと下ろす
4.2〜3の手順を1回として、10回行う
5.10回行ったら足を交代して、それぞれ10回×3セットずつ行う

【腹筋の運動】

1.あお向けの状態で両膝を立てておく
2.腹筋を使って上体を上げる(むずかしい場合は頭だけでも良い)
3.ゆっくりと下ろす
4.2〜3の手順を1回として、10回×3セット行う

それぞれの運動の回数は目安なので、自身の調子にあわせて調整してみましょう。

バランストレーニング

姿勢に関する障害によって転倒の危険性もあるので、バランストレーニングもおすすめです。自宅でできるバランストレーニングには、以下のような内容があげられます。

【バランストレーニング】

●膝を曲げた(スクワットをした)状態をキープする
●片足立ちの状態をキープする
●つま先を上げた状態をキープする
●かかとを上げた状態をキープする

それぞれのトレーニングでは手すりを持ったまま安全に行いましょう。各状態のまま5〜10秒間キープしていきます。

歩行の練習

身体機能と日常生活にとって重要な歩行能力を維持するためにも、歩く練習をすることも大切です。歩行練習をする際は、現在の身体機能によって環境を変えていきましょう。

●1人でも歩ける場合:壁や手すりなど、いつでも支えがある環境で歩行練習をする
●ややふらつく場合:壁や手すり、歩行補助具(杖・歩行器)を利用しながら歩行練習をする
●ふらつきが強い場合:誰かに介助してもらいながら歩行練習をする

上記はあくまでも1つの例なので、家屋環境にあわせて準備をしてください。

自宅で安全に過ごすためのポイント

トイレ

自宅で過ごすにはどのような工夫が必要なのでしょうか。ここでは安全に過ごすためのポイントを、家の場所にあわせて解説します。

玄関やドアでのポイント

玄関やドアに開き戸や引き戸などの種類があるので、それぞれにあわせた方法で開けることが大切です。

【開き戸の場合】

玄関やドアなどの開き戸の場合は、扉の端に立ちつつ腕を動かしながら開閉しましょう。扉の正面に立ちながらドアを引こうとすると後ろに下がる必要があるため、その拍子にふらついて転倒する恐れがあります。開き戸の周辺に身体を支えるための手すりがあると、さらに安心して開閉ができます。

【引き戸の場合】

ふすまをはじめとした引き戸では、扉の中心近くに移動しておくと身体を大きく動かことなく開けられます。扉の端で開けようとすると身体を大きく前に出す必要があるため、転倒の危険性が高まります。

このように、扉の種類にあわせて開け方を工夫しましょう。

廊下でのポイント

廊下を歩くときはテープを活用すると歩きやすくなり、転倒のリスクが低下します。たとえば、歩幅にあわせてテープを貼っておくと、それが目印となって足がすくみにくくなります。廊下から部屋に移るときの敷居の前にテープを貼れば、段差に気をつけるようになって転倒予防につながるでしょう。進行性核上性麻痺は注意力が低下したり、思うように身体を動かしにくくなったりするため、テープによる視覚を活用したアプローチは効果的です。

トイレでのポイント

トイレも廊下と同じように、テープで目印をつけておくとスムーズに移動ができます。トイレは廊下よりも狭い空間なので、足がすくみやすくなります。テープを活用して便座に移動するための道のりを作ったり、手すりの握る場所に印をつけたりすれば、安全にトイレ動作を行えるでしょう。

寝室・ベッド上でのポイント

進行性核上性麻痺が悪化すると起き上がりや立ち上がりが困難となるので、ベッド上の環境を整えることも重要です。ベッド上の起き上がり、立ち上がりを安全に行うためにも、柵や手すりを設置しておくといいでしょう。ベッドが低すぎると立ち上がりにくくなるので、高さを調節できる種類のものもおすすめです。

また部屋からベッドに向かう際は、直線のルートだと大きく方向転換する必要があり、すくみ足が出現しやすくなります。ベッドには回り込むように斜めから向かうと、方向転換が少なくなって安全に座れます。

進行性核上性麻痺の症状に適したリハビリを行おう

ストレッチをする高齢者とスタッフ

進行性核上性麻痺にはさまざまな症状があり、なかにはパーキンソン病に類似したものもあります。進行性核上性麻痺の症状を遅らせるには、薬物療法だけでなく継続的なリハビリも重要です。自宅でも行える運動はたくさんあるので、今回の記事を参考にしながら自身の状態にあわせて行ってみてください。また自宅内の環境を整えつつ、安全に過ごせるような動きを身につけていきましょう。
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