岸田内閣に移行してから、理学療法士の給料に関してどのような動きがあったのか気になる方はいるのではないでしょうか。岸田内閣に移行してから、処遇改善や理学療法士の賃上げに対しての言及がなされており、給料アップの計画が進められています。その一方で、理学療法士の大幅な給料アップは、いまだ難しい状況といえるでしょう。
この記事では、岸田内閣に移行後の理学療法士に関する動きや、現在の給料事情についてご紹介します。
岸田内閣に移行後の理学療法士の給料の状況について
岸田内閣に移行してから、理学療法士の給料に関してどのような動きがあるのでしょうか。ここではその状況について解説します令和4年に診療報酬改定による処遇改善が実施される
令和4年の2月より、診療報酬改定による処遇改善が実施されました。この処遇改善により、看護師や介護士、保育士などの給与の引き上げが行われています。その額は条件によりますが、収入の1〜3%程度であり、月額で換算すると4,000〜9,000円となります。この処遇改善は理学療法士や作業療法士も対象となっているため、給料アップがなされているといえるでしょう。しかし、理学療法士へ処遇改善による支給が行われるかは企業によって異なります。そのため、職場によってはこの恩恵を受けられないケースもゼロではありません。
出典:内閣官房|公的価格評価検討委員会 中間整理 令和3年12月21日
岸田総理がリハビリ職の賃上げについて言及
令和4年の5月に、岸田総理がリハビリ職の賃上げについて言及がありました。 参議院本会議にて、PT連盟組織代表の小川かつみ議員が理学療法士に関する給料水準や、リハビリの質や人材確保がしにくいことなどを岸田総理に質問しました。その質問に対して、岸田総理は「理学療法士をはじめとした職種ごとの仕事にあわせて、適正な水準の処遇となるように検討を続けたい」と答弁されています。今後も、理学療法士の賃上げに関する動向についてよく確認しておく必要があるでしょう。
出典:岸田総理へ質問「理学療法士等の処遇改善について」
理学療法士の給料事情について
実際に理学療法士の給料はどのような状況なのでしょうか。ここでは、理学療法士の平均年収や他の医療職との比較についてみていきましょう。理学療法士の平均年収は約430万円
統計調査によると、令和4年度の理学療法士全体の平均年収は「約430万円」とされています。平均年齢は約35歳で、月々の給料は約30万円という結果となっています 。また、年齢とともに平均年収は増加し、最大で約570万円(55〜59歳)です。一方で、国税庁によると令和4年度の給与所得者全体の平均年収は「458万円」です。 このように、理学療法士の平均年収は全体よりも低い結果となりました。
出典:令和4年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
国税庁|民間給与実態統計調査
理学療法士は他の医療職よりも平均年収は低め
理学療法士と他の医療職の給料、平均年収について、以下の表にまとめました。職種 | 平均年収 |
医師 | 約1,429万円 |
薬剤師 | 約583万円 |
看護師 | 約508万円 |
准看護師 | 約418万円 |
放射線技師 | 約544万円 |
臨床検査技師 | 約509万円 |
理学療法士 | 約430万円 |
出典:令和4年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
理学療法士の給料が上がりにくい原因
理学療法士は全体の給与所得者よりも平均年収は低い傾向にありますが、なぜ給料が上がりにくいのでしょうか。ここではその原因について解説します。理学療法士の人数が増えている
理学療法士の給料が上がりにくい理由の1つに、資格保有者が増えていることがあげられます。理学療法士が増加すると需要に対する供給が追いつき、希少性の低下にともなって給料も下がってしまうのです。日本理学療法士協会の調査によると、令和4年度の段階で理学療法士の国家試験に合格した方は累計で約21万人とされています。平成25年度の合格者累計が約11万人であることを考えると、10年間で理学療法士の人数が約2倍となっているのです。また、平成24年度から理学療法士の合格者が毎年約1万人となっており、今後も理学療法士の増加が予想されるでしょう。
出典:日本理学療法士協会|統計情報|協会の取り組み
制度によって給料の伸び幅に限界がある
理学療法士は制度の都合上、給料が伸びにくい職業でもあります。理学療法士はリハビリの提供によって診療報酬を得ていますが、1日に行える回数には限りがあります。そのため、理学療法士がリハビリで稼げる額には限界があるのです。これは理学療法士の年数は関係ないので、経験を積んだとしてもこの制度に変化はありません。管理職にならない限り、経験年数が増えても新人とそこまで給料が変わらない、というケースもあるでしょう。
このように、理学療法士の給料が上がらないのは、人数の増加や制度による問題などがあげられます。
岸田内閣の政策で理学療法士の給料の大幅なアップは期待できる?
結論から述べると、今後の政策による理学療法士の大幅な給料アップは、あまり期待はできないでしょう。実際に、令和4年の診療報酬改定による処遇改善でも4,000〜9,000円の増加でした。そのため、今後理学療法士の給料が上がったとしても、明確に違いが出るほどの額ではないと考えられます。診療報酬は年々変化するものの、リハビリの回数制限や理学療法士の人数増加などの問題点は残り続けています。このような理由から、給料の大幅なアップに対しては過度に期待しないほうが良いでしょう。
今後も理学療法士を続けるメリットはある?
理学療法士の大幅な給料アップは期待できないと説明しましたが、悪い点ばかりではありません。理学療法士を続けるうえで、以下のようなメリットもあります。
●国家資格だから仕事に困りにくい
●給料が安定している
●さまざまな職場で活躍できる
理学療法士は国家資格なので、一度取得すればずっと残るものです。そのため、仕事に困ることは基本的にないでしょう。理学療法士は景気に左右されにくく、安定して給料を得られるのも良い点です。
また、理学療法士は病院や介護施設だけでなく、以下のようなさまざまな職場で活躍が可能です。
●スポーツジム
●教育機関
●研究機関
●一般企業
このように、理学療法士にも多くのメリットがあることをおさえておきましょう。
理学療法士の給料を上げるには?
理学療法士の平均年収は低い傾向にありますが、給料を上げることは十分に可能です。ここでは、理学療法士の給料を上げる方法について解説します。役職に就く
今の職場に長期間勤めて役職に就くことで、給料のアップが期待できます。役職に就くには、リハビリの経験や知識を積み重ねるだけでなく、スタッフをまとめるマネジメントスキルも求められます。役職はリハビリ科や職場の運営にも関わることもあるので、経営に関するスキルも必要となるでしょう。役職を目指す場合は、理学療法士として貢献しつつ、上司や同僚から信頼を得られるように立ち回ることが重要です。また、現在の職場で役職に就ける状況なのかを、よく確認する必要があるでしょう。
転職する
今の職場よりも条件が良い場所に転職すれば、給料アップが可能です。求人を確認したり、転職エージェントを活用したりして、今よりも給料が高い職場を探してみましょう。求人を探す際は、給料だけでなく賞与や福利厚生などもチェックしておくことが大切です。給料が今よりも高い求人でも、賞与や福利厚生が充実していなければ、トータルで年収が下がるケースもあります。職場の場所によっては引越しや通勤手段が変わり、余計に出費がかさむ可能性がある点もおさえておきましょう。
副業する
副業で、本業とは別の収入を得る方法もおすすめです。副業には以下のように、さまざまな種類があります。
●Webライター
●Webデザイナー
●動画編集
●せどり
●ブログ
●投資
これらの副業はパソコン1台あればすぐにできるので、本業以外の時間をうまく使いたい方におすすめです。また、理学療法士のスキルを活かした副業には、訪問リハビリやスポーツインストラクターなどがあります。本業での給料アップが見込めない場合は、ぜひ副業を検討してみましょう。
他の資格を取得する
他の資格を取得するのも、給料アップの方法の1つです。理学療法士が取得しておきたい代表的な資格には、「認定・専門理学療法士」があげられます。この資格は理学療法士の上位資格のようなもので、職場によっては手当を受け取れるケースもあります。資格の取得は転職時にも、採用や給料に関して有利に働くこともあるでしょう。理学療法士に役立つ資格は豊富にあるので、試しに興味のあるものから取得を目指すのもおすすめです。
岸田内閣の動向から理学療法士の給料が上がるのかを確認しよう
岸田内閣に移行してから、処遇改善の実施や理学療法士に関する取り組みの検討がなされるようになりました。理学療法士の大幅な給料アップは難しいと考えられますが、今後の取り組みについてよく注目しておく必要があるでしょう。また、自身の行動で理学療法士の給料を上げることは十分に可能です。そのため、給料を上げるには理学療法士に関する情報を待つのではなく、自分から行動することも大切です。今後の動向について注目しつつ、自分でできる方法で給料アップを目指しましょう。
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