リハビリテーション総合実施計画書とは?実施計画書とのちがいや記載方法をご紹介
リハビリテーション総合実施計画書とは?実施計画書とのちがいや記載方法をご紹介
更新日:2023年02月09日
公開日:2023年01月31日

リハビリテーション総合実施計画書とはリハビリだけでなく、その書類で診療報酬を算定するために重要な書類です。しかし、総合実施計画書は内容を十分に把握していないと、臨床の場でうまく運用するのがむずかしい書類でもあります。この記事では、総合実施計画書とはどのような書類なのか、どのような記載をするのかをご紹介します。制度と現場の両面から内容をおさえつつ、今後の運用に役立ててみましょう。
目次
リハビリテーション総合実施計画書とは?
リハビリテーション総合実施計画書とはどのような書類なのでしょうか。ここでは総合実施計画書の概要について説明します。リハビリテーションを実施するために必要な書類
リハビリテーション総合実施計画書とは、リハビリを提供した際の診療報酬を算定するために必要な書類です。つまり、総合実施計画書がないとリハビリを実施しても診療報酬は得られないので、病院・施設側の利益が発生しません。さらに総合実施計画書はリハビリだけでなく、書類自体にも診療報酬が発生する「リハビリテーション総合計画評価料」があるのが特徴です。総合実施計画書は医師や看護師、リハビリスタッフなどと一緒に作成し、その内容を患者と家族に説明して同意を得ることで算定されます。総合実施計画書の作成は患者の入院時だけでなく月に1回のペースで更新し 、その度に診療報酬が発生します。
総合実施計画書の記載項目
リハビリテーション総合実施計画書の書式には以下のような記載項目があります。● 疾患原因
● 心身機能・構造
● 活動
● 栄養
● 参加
● 疾患原因
● 心理
● 環境
● 基本方針
● 本人・家族の希望 など
このように、総合実施計画書は患者の状況を細かく把握するための多数の記載項目があります。患者の身体面・精神面や今後の方針などを詳細に記載することで、チーム医療としての目標が明確となりやすいです。患者の状況も共有できるので、他職種との連携も取りやすく、適切なアプローチを行えるのも総合実施計画書の強みといえるでしょう。
総合実施計画書は診療報酬の算定だけでなく、他職種の連携を強化して患者をサポートするのに役立つ書類であることがわかります。
出典:リハビリテーション総合実施計画書
リハビリテーション総合計画評価料は?
リハビリテーション総合実施計画書の作成で算定できる「リハビリテーション総合計画評価料」は2種類あり、点数は以下のとおりです。● リハビリテーション総合計画評価料1:300点
● リハビリテーション総合計画評価料2:240点
ここではそれぞれの算定要件について説明します。
リハビリテーション総合計画評価料1の算定要件
リハビリテーション総合計画評価料1の算定要件は以下のとおりです。● 心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ)
● 脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ)
● 脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅱ)
● 廃用症候群リハビリテーション料(Ⅰ)
● 廃用症候群リハビリテーション料(Ⅱ)
● 運動器リハビリテーション料(Ⅰ)
● 運動器リハビリテーション料(Ⅱ)
● 呼吸器リハビリテーション料(Ⅰ)
● がん患者リハビリテーション料または認知症患者リハビリテーション料
これらのリハビリテーション料を算定している患者が対象です。
リハビリテーション総合計画評価料2の算定要件
リハビリテーション総合計画評価料2の算定要件は以下のとおりです。● 脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ)
● 脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅱ)
● 廃用症候群リハビリテーション料(Ⅰ)
● 廃用症候群リハビリテーション料(Ⅱ)
● 運動器リハビリテーション料(Ⅰ)または運動器リハビリテーション料(Ⅱ)
これらのリハビリテーション料を算定している患者が対象です。このように、病院・施設で満たしているリハビリテーション料によって算定できる総合計画評価料が変化します。
出典:診療報酬の算定方法の一部を改正する件
総合実施計画書の署名について
リハビリテーション総合実施計画書の診療報酬を算定するには、患者または家族からの署名が必要でした。しかし令和4年度より診療報酬の改定があり、署名に関しての見直しがされました。リハビリテーション実施計画書及びリハビリテーション実施総合計画書の署名欄について、患者等に当該計画書に係る説明を行う際に、説明内容及び当該患者等の同意を得た旨を診療録に記載することにより、同意を得ていること等が事後的に確認できる場合には、患者等の署名を求めなくても差し支えないこととする。(※引用文)
この変更により患者自身の署名が困難、かつ距離・都合の問題で家族が対応できない場合、電話での説明を行えば算定が可能となりました。しかし実施計画書の交付自体は直接行う点と、初回だけは患者あるいは家族の署名が必要である点には注意しましょう。
出典:個別改定項目について - 厚生労働省
リハビリテーション実施計画書とのちがいは?
リハビリテーション総合実施計画書と類似した書類に「リハビリテーション実施計画書」があります。この2つは同じような役割がありますが、実は明確なちがいがあるのです。ここでは実施計画書の役割と、総合実施計画書とのちがいについて説明します。リハビリテーション実施計画書とは?
リハビリテーション実施計画書とは、訪問リハビリ・通所リハビリを行うときの計画が記載された書類です。役割は総合実施計画書と同様で、リハビリを実施して診療報酬を算定するためには実施計画書が必要です。つまり、リハビリを行うときは実施計画書または総合実施計画書のどちらかを用意しなければいけません。実施計画書のみでは診療報酬を算定できない
総合実施計画書と大きく異なる点として、実施計画書は書類自体で診療報酬を算定できない点です。つまり、経営の目線からすると互換性のある総合実施計画書を使用した方が得といえるでしょう。しかし総合実施計画書は、リハビリスタッフだけでなく医師や看護師などのさまざまな職種が協力して作成する必要があります。一方実施計画書は医師とリハビリスタッフだけでも作成できるので、作成の負担が少ないのが長所です。リハビリの提供で診療報酬の算定をする際は、病院・施設の状況に応じた書類の選定が大切です。
リハビリテーション総合実施計画書の書き方
実際にリハビリテーション総合実施計画書を記載するとき、どのような書き方をすべきでしょうか。ここではリハビリスタッフが中心に記載する項目について説明します。心身機能・構造
心身機能は、その患者の現在の状況について記載する項目です。意識障害や認知症など、それぞれチェックリストがあるので、該当する箇所を埋めます。運動器疾患や廃用症候群の場合はチェックする数は少ないですが、脳血管疾患ではより詳しく記入する必要があります。「摂食機能障害」や「失行・失認」などは理学療法士だけでは評価がむずかしいケースもあるので、作業療法士や言語聴覚士と共有しながら記載をしましょう。チェックリストだけでなく、具体的な内容を記載する項目もあるので、より詳細な評価が求められます。
活動
活動では「している活動」と「できる活動」の2種類を記載する項目です。歩行やトイレなどの複数の活動を、以下の自立度に分けて評価します。● 自立
● 監視
● 一部介助
● 全介助
● 非実施
ここでは「している活動」と「できる活動」のそれぞれについて説明します。
している活動
「している活動」の項目では日常で行っているADL、つまり「FIM(Functional Independence Measure)」のADL評価を参考にしています。たとえば、リハビリでは廊下歩行を監視レベルで行えますが、それ以外の時間は安全のために介助が必要だとしましょう。この場合、廊下歩行は「一部介助」と記載します。このように「している活動」は、その人の限界の動作ではなく、日常生活レベルの動作に着目して記載する項目です。
できる活動
「できる活動」の項目ではリハビリ時の動作、つまり患者が行える限界の動作を記載します。「している活動」とは異なり、この項目では「BI(Barthel Index)」のADL評価を参考にします。たとえば、普段の生活では車椅子からベッドまでの移乗に介助が必要ですが、リハビリでは監視下で行えるとしましょう。この場合、移乗は「監視」と記載します。このように普段のADLは関係なく、その人が最大でどの程度まで動作を行えるかをチェックするのが「できる活動」の項目です。
参加
「参加」の項目では、患者の家庭での役割や社会的参加、今後の退院先などを確認し、そのアプローチ内容を記載します。たとえば、仕事をしているときにケガや病気を抱えて入院した患者がいたとしましょう。その患者に「退院後は職場復帰したい」という希望がある場合、その旨とともに目標達成のためのリハビリ内容を記載します。
また総合実施計画書は定期的に更新するので、その度に評価の見直しを行い、リハビリ後の変化を記載します。リハビリを続けていくなかで患者の目標が変わることもあるので、適宜目標にあわせたアプローチ内容の調整が大切です。
活動
「活動」の項目では、患者の目標となるADLを確認し、到達のためのアプローチ内容を記載します。「参加」の項目を参考に、目標の達成にはどのような動作が必要なのかを考えます。たとえば、自宅内を車イスで安全に過ごすことが目標だとしましょう。その場合、歩行よりも車イスの操作やベッド移乗動作を獲得する方が重要度は高いといえます。職場復帰が目標だとしたら、自宅内の動作だけでなく、屋外歩行や交通機関の利用も視野に入れなければいけません。その患者にはどのような動作が必要なのかを考え、適切なアプローチ内容を記載する必要があります。
心身機能
「心身機能」の項目では、その患者の大まかな身体機能や動作を記載します。おもに筋力や麻痺の程度、拘縮の有無、認知機能などがあげられます。またリハビリでは、どのような訓練まで実施しているのかを記載することも多いです。出典:リハビリテーション総合実施計画書
リハビリテーション総合実施計画書についてのQ&A
ここでは厚生労働省によるリハビリテーション総合実施計画書に関連したQ&Aについてご紹介します。(※以下引用文)(問201)
リハビリテーション実施計画書及びリハビリテーション実施総合計画書について、「計画書に患者自ら署名することが困難であり、かつ、遠方に居住している等の理由により患者の家族等が署名することが困難である場合には、(中略)家族等に情報通信機器等を用いて計画書の内容等を説明した上で、説明内容及びリハビリテーションの継続について同意を得た旨を診療録に記載することにより、患者又はその家族等の署名を求めなくても差し支えない。ただし、その場合であっても、患者又はその家族等への計画書の交付が必要であること等に留意すること」とあるが、
1 この場合、医師が計画書の内容等の説明等を行う必要があるか。
2 診療録に計画書を添付することをもって、「説明内容及びリハビリテーションの継続について同意を得た旨を診療録に記載すること」に代えることはできるか。
3 交付する計画書の署名欄はどのように取り扱えばよいか。
(答え)
それぞれ以下のとおり。
1 そのとおり。
2 不可。家族等への説明を行った医師による診療録への記載が必要である。
3 当該計画書を作成した医師が、計画書の署名欄に、同意を取得した旨、同意を取得した家族等の氏名及びその日時を記載すること。
(問202)
前問のリハビリテーション実施計画書及びリハビリテーション実施総合計画書の署名の取扱いに関し、「疾患別リハビリテーションを当該患者に対して初めて実施する場合(新たな疾患が発症し、新たに他の疾患別リハビリテーションを要する状態となった場合であって、新たな疾患の発症日等をもって他の疾患別リハビリテーションの起算日として当該他の疾患別リハビリテーションを実施する場合を含む。)を除き」とあるが、他の保険医療機関から転院した患者であって、転院前から継続して疾患別リハビリテーションを実施するものについては、どのように考えればよいか。
(答え)
署名の取扱いについては、「疾患別リハビリテーションを初めて実施する場合」に該当するものとして取り扱うこと。
(問203)
標準的算定日数を超えて、1月に13単位以内の疾患別リハビリテーションを行っている患者について、1月に1回以上FIMの測定を行う必要があるか。
(答え)
原則として測定を行う必要がある。
リハビリテーション総合実施計画書の特徴を把握しておこう
リハビリテーション総合実施計画書はリハビリを行うために必要な書類であり、それ自体にも診療報酬の算定が可能です。総合計画評価料には2種類あり、それぞれ算定要件が異なることに注意しましょう。今後も制度が新しく変わっていくため、その度に改定内容を確認し、柔軟に対応できるような体制作りが重要です。関連記事
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