言語聴覚士(ST)の需要は今後高まる?資格取得に悩む方へ

言語聴覚士の需要について、現状と課題点から将来性のある仕事かどうかを詳しく解説しています。言語聴覚士の資格取得に悩む方にとって参考になる内容となっています。

2020.10.22

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言語聴覚士の需要について考える言語聴覚士の写真

言語聴覚士の仕事に興味はあるものの、理学療法士や作業療法士と比べて需要に対する実態が分からず、資格取得への一歩がなかなか踏み出せないという方は少なくないはず。
そこで、言語聴覚士をとりまく現状と課題点から「需要と将来性」について考えてみました。
言語聴覚士の仕事について理解を深めたい、資格取得を目指すきっかけにしたいと考える方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

言語聴覚士を取り巻く現状と課題点

2015年から2020年にかけての言語聴覚士資格合格者の推移グラフ.jpg

(参考:日本言語聴覚士協会/会員動向


1997年に国家資格として言語聴覚士資格制度がはじまって以降、令和2年3月時点の有資格者の累計数は34,489名となっており、年間では約1500人程度の人が言語聴覚士の国家試験に合格しています。
しかし、理学療法士の累計数182,893名(※令和2年度時点)や作業療法士の累計数89,717名(※平成31年度時点)と比較すると、言語聴覚士として働く人はまだまだ少ない傾向にあります。
言語聴覚士は、人が生涯幸せに生きていくために欠かせない「話す・聴く・食べる」ことへのリハビリに特化した専門職であり、子どもから高齢者まで幅広い患者から必要とされています。
言語聴覚士の働き先は医療機関だけでなく、介護保険法の改正により福祉施設などで働く言語聴覚士も増え、また子どもの保育現場や教育現場でも活躍するなど、その活動範囲は多岐にわたります。
しかし、このように活躍の場を広げていても、実は言語聴覚士の仕事はあまり世間的に詳しくは知られていません。
言語聴覚士と関わりの深い介護・福祉業界や医療業界で働く人にとってはもちろん馴染み深い職種ではありますが、基本的に他の医療職と異なり言語聴覚士は専用個室で1対1で患者と向き合っているため、外からはあまりどのような働き方をしているかが分からないのです。
そのため、「言語聴覚士はどんな仕事をする職種?」と疑問に思う人も少なくないのが現状です。
また、リハビリに欠かせない職種でありながらも、就職先においてその在籍数はかなりのばらつきがみられます。
リハビリを専門とする病院などにおいては多数の言語聴覚士が在籍しているケースもありますが、有資格者数が少ないことから病院や介護施設などによっては1名しか在籍していないことも多く、またそもそも在籍数が0という施設もあります。
このような現状から、言語聴覚士によるリハビリを必要としている人は多くいるものの、身近な場所で診てもらえず他府県をまたいで通院する人も少なくなく、まだまだ言語聴覚士の認知と有資格者が少ないということは今後の大きな課題となっています。

言語聴覚士の需要と将来性

言語聴覚士の需要と将来性のタイトルと花の写真.jpg

比較的新しく誕生した国家資格であるがゆえに、世間的には知名度が低いとされる言語聴覚士。
しかし、現状と課題をふまえても言語聴覚士の需要は高く、将来性のある職種であるといってもよいかもしれません。
このように言える理由にはさまざまなことが挙げられますが、特に今後言語聴覚士の活躍に大きく起因することとして、以下のようなことが「将来性がある」理由として挙げられます。

高齢化により職場の選択肢が豊富に

高齢化が進む日本では、加齢とともに発症しやすくなる嚥下障害や誤嚥の患者、また増加傾向にある高齢者の認知症患者は今後ますます増えていくことが予想されます。
このような将来を見据え、嚥下障害や認知症による言語障害などに対応できる言語聴覚士を配置する施設は増加傾向にあります
現在も、就職先となる施設は医療現場のみならず介護や福祉、保健の場など多岐にわたっていますが、高齢化に伴い今後さらに言語聴覚士の配置を増やす施設は拡大していく可能性が高く、それと比例して求人数も増加していくことが予想されます。
また、2025年に超高齢化社会を迎えるにあたり、それぞれの地域で取り組みが進む「地域包括ケア」においても、言語聴覚士の活躍は欠かせないものとなっています。
地域包括ケアは、地域に住まう高齢者の暮らしを医療職や介護職、地域の職員などが連携してサポートをするシステムですが、病気や障害があってもその人らしい暮らしを住み慣れた地域で行うには、言語聴覚士による「話す・聴く・食べる」ことに対するサポートは「生きることの幸せ」を継続するうえで必要不可欠です。
2025年における高齢者の統計予想は65歳以上の高齢者が3,626万人で、全人口に対して占める割合は39%以上。
この統計通りに高齢者が増加していくと3人に1人は65歳以上となるため、地域包括ケアの重要性はますます高いものとなり、必然的に言語聴覚士の需要もより高くなっていくでしょう。


★言語聴覚士が活躍できる職場について知りたい方はこちら


医療機関では活躍の幅が広がる

医療機関における言語聴覚士を取り巻く状況は年々変化をみせていますが、診療報酬改定によって関われる疾患は増加傾向にあり、活躍の幅は以前にも増して広がりをみせています
最近のニュースでは、2020年度診療報酬改定において「疾患別リハビリテーション料に係る言語聴覚士の配置の見直し」が大きな転機となったことが記憶に新しく、この見直しによって呼吸器リハビリテーションへの介入や、難病患者リハビリテーションや脳血管疾患等リハビリテーションの施設基準にも言語聴覚士の追加が決定しました。このように、医療機関において言語聴覚士の働きはどんどん認められる方向へと進んでおり、ST室での患者との関わり以外にも、病棟や地域で担う役割と需要は高まりつつあります。
今後は、これまで中心的であった「言語障害・聴覚障害・嚥下障害」のリハビリ以外にもさまざまな疾患に携わる機会は増えることが予想されるため、担当領域の拡大からスキルを磨く環境もより整備されていくのではないでしょうか。


★2020年度診療報酬改定に伴うリハビリの要点まとめを確認したい方はこちら


聴覚分野における言語聴覚士の需要は高まる

各分野における言語聴覚士の数を表すグラフ.jpg

(参考:日本言語聴覚士協会/会員動向


言語聴覚士が専門とする分野は「摂食・嚥下」「言語」「発声・発語」「聴覚」「認知」などさまざまですが、そのなかでも聴覚分野で働く言語聴覚士の割合は言語聴覚士全体の約4%程度(※)。(※令和2年度3月現在のデータより算出)
各分野における言語聴覚士の数をみると、「摂食・嚥下」分野、「成人言語・認知」分野、「発声・発語」分野にて働く言語聴覚士は1万人以上いるのに対し、聴覚分野で働く言語聴覚士は2,082人とかなり少ない状況となっています。
しかし、高齢化が深刻な日本では今後高齢者の軽 ・中等度難聴患者の数は増加していく可能性が高く、また補聴器の潜在的需要も高くなる可能性があることから、聴覚分野における言語聴覚士の需要と役割は拡大していくことが予想されます。
現状としては聴覚分野で活躍する言語聴覚士数はまだまだ少ないですが、社会的ニーズが高いからこそ聴覚障害に強みを持つ言語聴覚士は近い将来優遇される可能性が高く、これから言語聴覚士を目指すうえでは注目すべき領域といえます。

これからの言語聴覚士に求められること

言語聴覚士に求められることというタイトルと手を握り合う高齢者と言語聴覚士の写真.jpg

年々言語聴覚士が担う役割は高く評価され、病院やクリニック、介護施設、保健施設、障害者施設や教育施設など様々な場所において求められ、働き口は増加傾向にあります。
しかし、言語聴覚士が専門とする分野によってはまだまだ配置人数の割合が低く、知識も十分ではないケースもあることから、量・質ともに向上していくことが今後の重要な課題といえます。
そのためには、言語聴覚士として働く一人ひとりが常に学びの姿勢を持つこと、そして言語聴覚士の魅力を外部に発信し、より多くの人が言語聴覚士の仕事に興味を持つきっかけを作ることが重要です。
また、言語聴覚士のリハビリはなかなか効果がすぐに出ないことが多くあり、精神的に負担を感じてしまうこともありますが、根気よく患者と向き合いさまざまなアプローチを持って問題に介入していく姿勢を持つことも、大切なのではないでしょうか。

まとめ

言語聴覚士の社会的ニーズは年々高まっており、現状の言語聴覚士人口をみても将来性は十分にあるといえます。
医療機関にとどまらず活躍の場もますます広がりをみせていることから、就職先も見つかりやすく、これから言語聴覚士を目指す人にとって不安な点は少ないといえるのではないでしょうか。
まだまだ将来の可能性を秘めている職種だからこそ、自信を持って対応できる専門スキルを身につけることで強みややりがいを見つけることができるはず。
言語聴覚士の資格取得に興味がある方は、今後の需要と将来性にも注目し、どのような言語聴覚士として働きたいかを想像しながら、ぜひ資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。

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