人材の求人依頼 PTOTSTワーカー 0120-51-1151

運動器リハビリテーションとは?対象疾患や単位などの制度について理解しておこう

運動器リハビリテーションとは?対象疾患や単位などの制度について理解しておこう

更新日:2023年01月19日

公開日:2023年01月18日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
車椅子の女性と笑いあうスタッフ

リハビリにはさまざまな分野がありますが、そのなかでも運動器に興味を持っている理学療法士も多いのではないでしょうか。しかし運動器のリハビリではどのような人が対象なのか、仕事を行ううえでなにか決まりがあるのかがイマイチわからない人もいると思います。この記事では、運動器リハビリテーションにおける対象疾患や制度についてご紹介します。これから運動器を中心とした医療施設の就職、あるいは転職を考えている人の参考になれば幸いです。

運動器リハビリテーションとは

スタッフと一緒に体操をする車椅子の男性

まずは運動器リハビリテーションについて理解しておきましょう。運動器とは「身体を動かすことに関係する器官・組織」の総称であり、おもに骨や筋肉、神経などがあげられます。これらの器官・組織が病気やケガによって障害を抱え、機能が低下したときに行われるのが、運動器リハビリテーションです。

運動器のリハビリでは低下した筋力や関節可動域などの機能改善を図りつつ、日常生活に必要な動作の獲得を目指します。自宅で安全に過ごせるようにするだけでなく、職場やスポーツ活動の復帰のためにリハビリを行うこともあります。

その他にも健康寿命を延ばすことを目的とした取り組みも、運動器リハビリといえるでしょう。そのため運動器のリハビリを受ける人は、高齢者から若年層まで幅広いく存在しています。

運動器リハビリテーションが対象の代表的な疾患

和やかに話す男女スタッフ

運動器リハビリではどのような疾患が対象となるのでしょうか。ここでは代表的な運動器疾患をいくつかご紹介します。

大腿骨近部骨折

大腿骨近位部骨折は、股関節のつけ根の骨が折れてしまう疾患です。大腿骨近位部骨折はおもに以下の2種類に分類されます。

・大腿骨頚部骨折:骨頭の周辺が折れること
・大腿骨転子部骨折:大転子の周辺が折れること

これらの受傷原因で一番多いのは交通事故や転落などではなく、日常生活でも起こりうる「転倒」です。とくに加齢で骨粗鬆症が進行し、骨の強度が低下した高齢の女性が受傷することが多く、男女比では1:4の割合といわれています。ほとんどのケースで手術が必要となり、術後はなるべく早期に離床してリハビリを行います。大腿骨近位部骨折は「寝たきり」になる要因でもあるため、認知症や身体機能が大きく低下する前に手術・リハビリを実施することが大切です。

脊柱管狭窄症

脊柱管狭窄症は、背骨にある「脊柱管」と呼ばれる神経のとおり道が狭くなる疾患です。脊柱管が狭くなると神経が圧迫されやすく、痛みや感覚低下といった症状が現れます。とくに歩き続けると徐々に痛みやしびれが強くなり、休むと軽快する「間欠性跛行」が代表的な症状です。脊柱管狭窄症を放っておくと、やがて日常生活にも大きな支障をきたす危険性があります。

治療法は大きく分けて「保存療法」と「手術療法」の2種類があります。多くの場合は、服薬やコルセットの着用で痛みをコントロールし、運動療法で筋力を強化する保存療法を行うことが多いです。それでも症状が進行して痛みやしびれが強くなった場合、手術療法を実施して神経を圧迫する原因を取り除きます。

肩腱板断裂

肩腱板断裂は、肩関節の深層部にある棘上筋や大円筋といった、肩甲上腕関節を支えている筋肉の腱が切れた状態のことです。腱板断裂が起きると、以下のような症状が現れます。

 ● 夜間痛が現れる
 ● 腕を上げ下げするときに肩が痛くなる
 ● 肩以外だけでなく腕にも痛みが現れる など 

腱板断裂が進行すると痛みがさらに強くなり、腕がまったく上がらなくなることもあります。腱板断裂は加齢による変化や肩の使いすぎが原因で起こり、気づかないうちに発症していることも多いです。若年層では、スポーツ・労働で肩を酷使していると発症しやすいです。

腱板断裂の治療も保存療法と手術療法の2種類に分かれています。保存療法の1つであるリハビリでは、痛みを避けての関節運動や低負荷での筋力トレーニングを中心に行います。

変形性関節症

変形性関節症とは、関節軟骨が徐々にすり減ることで発症する疾患です。関節軟骨は、関節の動きをスムーズにするための役割を持っています。しかし変形性関節症になることで、スムーズな動きが阻害されて関節の痛みや変形が生じてしまいます。

変形性関節症は「膝関節」と「股関節」に生じることが多く、症状が進行すると痛みが強くなって歩行困難となることもあるでしょう。この疾患も最初の段階は保存療法を行い、関節の痛みをやわらげるために運動療法や物理療法を実施します。場合によっては装具を使用し、関節の保護・アライメントの矯正を図ります。改善がみられない場合は、人工関節置換術を用いた手術療法が必要です。手術後も筋力や関節可動域を確保するために、引き続きリハビリの継続は重要です。

運動器リハビリテーションのセラピストの役割

スタッフと体操をする女性と男性

運動器リハビリでは、理学療法士や作業療法士などのセラピストが中心となって行います。ここではそれぞれのセラピストの役割について説明します。

理学療法士

理学療法士(Physical Therapist)は、おもに患者さんの身体機能の改善を図り、歩く・立つ・座るなどの基本的な動作の獲得を目指してリハビリを行います。患者さんの身体機能を評価し、現在の希望と目標にあわせてリハビリプログラムを作ります。運動療法や物理療法だけでなく、自宅で過ごすときの注意点や禁忌動作の指導など、さまざまな視点からアプローチを行うのが特徴です。

「理学療法士は下肢に対してのリハビリがメイン」というイメージがあるかもしれませんが、上肢の運動器疾患にも携わることは多いです。そのため下肢や体幹だけでなく、上肢に対してのリハビリの知識も求められます。

作業療法士

作業療法士(Occupational Therapist)は基本動作だけでなく、その人らしさを取り戻すために必要な応用動作の獲得を中心にリハビリを行います。自宅だけでなく、社会復帰をするために以下のような練習を行います。

 ● パソコンのタイピング
 ● 家事
 ● スマートフォンの操作
 ● 手芸
 ● 裁縫
 ● スポーツ など

このように作業療法士は基本動作の延長である、手指の細かい動作やダイナミックな動作などの獲得を目指すのが特徴です。もちろんこれらの練習は作業療法士だけの役割ではなく、理学療法士のリハビリでも行われることもあります。また上肢の機能に問題がない患者さんであれば、理学療法士のように下肢や体幹のアプローチを中心に行うこともあるでしょう。

運動器リハビリテーションセラピスト

運動器リハビリは、理学療法士や作業療法士だけでなく「運動器リハビリテーションセラピスト」の資格を持っている人が行うこともあります。ここでは運動器リハビリテーションセラピストの概要について説明します。

国家資格ではないがリハビリを行える

運動器リハビリテーションセラピストは、日本運動器科学会が定めた資格の1つであり「みなしPT」ともいわれています。他のリハビリ職と異なり国家資格ではありませんが、取得すると医師や理学療法士のもとでリハビリの提供が可能です。この資格は以下の有資格者が取得できます。

 ● 看護師
 ● 准看護師
 ● あんま師
 ● マッサージ師
 ● 指圧師
 ● 柔道整復師

運動器リハビリテーションセラピストは診療報酬の加算対象なので、施設によっては取得をすすめている場所もあります。

資格の取得方法

運動器リハビリテーションセラピストの資格を取得するためには、以下の条件が必要です。 

 ● 研修会の修了試験に合格する
 ● 勤務する医療機関の常勤勤務者である
 ● 指導医は「日本整形外科学会専門医」か「日本専門医機構認定整形外科専門医」で、日本運動器科学会の会員である
 ● 所属している医療機関で3か月の実技プログラムを修了している

この条件を満たした場合、運動器リハビリテーションセラピストとしてリハビリの提供が可能です。しかし一度資格を取得したらそれで終了ではなく、5年間の有効期間があります。資格を更新するには症例報告を提出したり、学会に参加したりして得られる単位を、合計10単位分取得する必要があります。

出典:資格取得研修会開催情報 - 日本運動器科学会
資格継続関連情報 - 日本運動器科学会

資格を活かせる職場

運動器リハビリテーションセラピストの資格を活かせる職場は、整形外科のある病院やクリニックなどが中心です。この資格は今後の将来性にも影響し、柔道整復師や指圧師が取得することで転職の幅が広がります。看護師の場合は、職場内での新しい役割を担う人材として貢献できる可能性があるでしょう。

運動器リハビリテーションを実施するための制度

スタッフと杖をつきながら散歩する女性

運動器リハビリの概要や対象疾患だけでなく、制度についても理解しておきましょう。ここでは運動器リハビリを実施するための制度について説明します。

運動器リハビリテーション料とは

運動器リハビリテーション料とは、運動器疾患を抱える患者さんにリハビリを行うときに算定するものです。運動器リハビリテーション料には「Ⅰ〜Ⅲ」の3種類に分かれており、それぞれ算定する点数と取得できる条件が異なります。また運動器疾患の患者さんに対してリハビリを行う際は、厚生労働省が定める施設基準を満たしたうえで届出が必要です。

運動器リハビリテーションの点数と算定日数

運動器リハビリテーションのⅠ〜Ⅲの点数は以下のとおりです。

 ● 運動器リハビリテーション料(Ⅰ):185点/単位
 ● 運動器リハビリテーション料(Ⅱ):170点/単位
 ● 運動器リハビリテーション料(Ⅲ):85点/単位

このように、区分によって単位数が異なるのがわかります。また算定日数はリハビリテーション料に関係なく、すべて150日に統一されています。

運動器リハビリテーションの届出要件

運動器リハビリテーションの届出に必要な条件についてみていきましょう。まず施設のリハビリ室の必要な面積は、Ⅰ〜Ⅲに共通して45㎡以上の広さが必要です。人員基準は以下のとおりです。

 ● 運動器リハ(Ⅰ):専任の常勤医師が1名以上、専従の常勤PT・OTあわせて4名以上が必要
 ● 運動器リハ(Ⅱ):専任の常勤医師が1名以上、専従の常勤PTあるいはOTの2名以上が必要
 ● 運動器リハ(Ⅲ):専任の常勤医師が1名以上、専従の常勤PTあるいはOTの1名以上が必要 

必要な設備基準は、Ⅲでは以下のとおりです。

 ● 歩行補助具
 ● 訓練マット
 ● 治療台
 ● 砂嚢などの重錘
 ● 各種測定器具(ゴニオメーターや握力計) など

Ⅰ〜Ⅱでは上記の他に、以下の設備が求められます。

 ● 血圧計
 ● 平行棒
 ● 姿勢矯正用鏡
 ● 各種車イス
 ● 各種歩行補助具 など

これらの要件を満たしてはじめて、運動器リハビリの提供が可能となります。理学療法士・作業療法士がリハビリを実施する背景には、このような制度があることを理解しておきましょう。

出典:個別事項(その1) - 厚生労働省
運動器リハビリテーション料(Ⅰ)(H002)
運動器リハビリテーション料(Ⅲ)(H002)

運動器のリハビリテーションを行える就職先

車椅子の女性の手を握るスタッフ

運動器のリハビリを実施している職場は多く、それぞれ施設によって特徴が異なります。ここでは運動器のリハビリを行える代表的な就職先について説明します。

病院

病院で勤務している医師が運動器に精通している人であれば、整形疾患を抱えた患者さんの割合が多くなる可能性があります。病院は運動器だけでなく脳神経や循環器などの病気を持った患者さんも入院するので、他にも幅広い分野の知識を深められるでしょう。

また病院には急性期や回復期など、さまざまな種類があるので、入院時期によって患者さんの状態は変化します。そのため、どの時期の患者さんのリハビリを行いたいかを考えることも大切です。運動器のリハビリを行いつつ、他の疾患の勉強もしたい人には病院がおすすめです。

クリニック

整形外科クリニックであれば、運動器疾患を抱えている人だけにリハビリを提供できます。クリニックは外来患者さんへのリハビリが中心なので、自立して生活できる人が来院することがほとんどです。また学生から高齢者まで、幅広い年齢層の人がリハビリを受けに訪れるのが特徴です。

病院では1人に2〜3単位入ってじっくりリハビリを行いますが、整形外科クリニックは1日に10人以上も来院することが多く、1人あたり1単位となりやすいです。そのため多くの患者さんのリハビリを行う分、素早い対応が求められます。整形外科クリニックは、運動器のリハビリだけを行いたい人におすすめです。

スポーツ分野

他の運動器のリハビリと少し異なりますが、スポーツ分野に所属するのもいいでしょう。
フィットネスジムやクラブチームでは、身体機能の向上を図るための指導をしたり、ケガをしたときのリハビリを行ったりしています。対象者は若い世代の人やスポーツ選手がほとんどなので、病院・クリニックとはまたちがった楽しさがあります。スポーツ分野に興味がある人は、ぜひこちらの就職・転職も考えてみましょう。

運動器リハビリテーションを理解して就職に役立てよう

スタッフにベッドの上でできる体操を教えてもらっている男性

運動器リハビリは骨折や変形性関節症など、運動に必要な組織・器官の障害を対象としています。運動器のリハビリを行える職場はさまざまで、病院やクリニックが代表的です。また制度によって対象疾患やリハビリの点数、算定日数が決まっているので、事前に理解しておくことをおすすめします。運動器リハビリについて知識を深めたうえで、今後の就職・転職に役立てていきましょう。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連ジャンル

最新コラム記事