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糖尿病治療で行われる運動療法の効果とは?おすすめの内容や注意点をご紹介

糖尿病治療で行われる運動療法の効果とは?おすすめの内容や注意点をご紹介

更新日:2023年03月15日

公開日:2023年03月15日

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おなかをさする男性

国内だけでなく世界でも増加傾向にある糖尿病の治療には、運動療法がおすすめとされています。しかし、運動療法にはどのような効果があるのか、どのような内容を行えばいいのか、よくわからない方もいるのではないでしょうか。この記事では、糖尿病治療で行われる運動療法について詳しくご紹介します。糖尿病は進行すると、命にも関わるような合併症をともなう危険性があります。いつまでも健康な日々を過ごすためにも、運動療法の重要性について学んでみましょう。

糖尿病とは

角砂糖で作った壊れたハート

糖尿病とは、なんらかの原因で「インスリン」というホルモンの分泌量や効果が低下し、高血糖の状態が続く病気です。インスリンとは膵臓から分泌されるホルモンで、高くなった血糖値をおさえる働きがあります。ここでは、糖尿病の概要について解説します。

1型と2型に大きく分類される

糖尿病は大きく「1型」と「2型」の2種類に分類されます。1型糖尿病は、インスリンの分泌量の低下が原因で発症するのが特徴です。インスリンの分泌量が極端に少なくなるので、血糖値がうまく下げられず、高血糖となります。インスリンが分泌されないメカニズムははっきりとわかっていませんが、自己免疫によるものと考えられています。

2型糖尿病はインスリンの分泌量が少なくなったり、効果が弱くなったりすることが原因で高血糖となるパターンです。2型は遺伝的な要素に加えて、普段の生活習慣による影響が強いとされています。また1型の割合は5%程度で、糖尿病患者のほとんどが2型に分類されます。

糖尿病の症状

糖尿病は、初期段階ではほとんど自覚症状がありません。糖尿病がある程度進行したら、少しずつ症状が現れはじめます。おもな症状は以下の通りです。

●喉が渇きやすくなる
●トイレの回数が増える
●体重が減少する
●疲れを感じやすい など

糖尿病は悪化するまでは気づきにくく、健康診断や突然の自覚症状でようやく判明するケースも多いです。

糖尿病患者が増加している原因

厚生労働省の調査によると、平成28年の段階で糖尿病患者と糖尿病疑いの方をあわせると約2,000万人もいるとされています。国内だけでなく世界全体を含めると、糖尿病患者は3億5,000万人もいるとされており、今後も増え続けると予想されています。そのため、糖尿病は世界的にも改善すべき課題となっているのです。
 
糖尿病患者が年々増加している原因として、時代の流れにともなって生活習慣が変化したことがあげられます。たとえば、増えてきているハイカロリー食品を頻繁に食べると高血糖となりやすく、糖尿病につながる可能性が高まるでしょう。またコロナウイルスの影響で運動不足になる人が増えた点も、追い風になっていると考えられます。

 引用:平成28年「国民健康・栄養調査」の結果 - 厚生労働省
2016年世界保健デーのテーマは「糖尿病」です。 - 厚生労働省 

糖尿病の3大合併症とは

痛がる中高年の女性

糖尿病は進行すると合併症をともなうケースがあり、とくに以下の障害を発症しやすいです。

●糖尿病網膜症
●糖尿病性腎症
●糖尿病神経障害

この3つは糖尿病の3大合併症ともいわれています。ここでは、この3大合併症を中心に解説します。

糖尿病網膜症

糖尿病網膜症とは、目の奥にある「網膜」に生じる障害です。高血糖状態が続くと、網膜に栄養を送っている毛細血管が傷つきはじめ、最終的に失明する危険性があります。 

網膜症の初期は「単純性網膜症」と呼ばれ、この段階から血管が破れたり、出血したりする症状が現れます。症状が進行すると「前増殖網膜症」の段階に移行し、傷ついた血管を補うために新しい毛細血管を作りはじめるのです。しかし、新しい血管も高血糖の影響でダメージを受けるので、余計に出血が広がります。この血管を作っては出血を繰り返し、悪循環となる段階を「増殖網膜症」といいます。

糖尿病性腎症

糖尿病性腎症では、腎臓の機能が障害されてきます。腎臓は左右に1つずつある臓器で、体内の水分量や血圧を調節したり、老廃物を取り除いたりする働きがあります。高血糖状態が続くと腎臓が傷つき、徐々に機能の低下がはじまるのです。

障害が進行すると腎臓の働きが弱まるため、むくみや貧血、気分不快などの症状が現れます。最終的に腎臓が機能しなくなり、代わりに人工透析が必要です。人工透析患者の原因の1番が糖尿病性腎症といわれているため、糖尿病の影響がいかに大きいのかがわかります。

糖尿病神経障害

糖尿病によってさまざまな神経障害も生じます。障害される神経の種類は以下の通りです。

●運動神経(手や足を動かす神経)
●感覚神経(ものを感じるための神経)
●自律神経(交感神経・副交感神経をコントロールする神経)

このように、障害された神経の種類によって症状は大きく異なります。たとえば、運動神経が障害されたら手足が動かしにくくなり、歩いたときに転倒する危険性が高まるでしょう。感覚神経が障害された場合、手足が痺れやすくなったり、痛みや熱さを感じにくくなったりします。自律神経では、活動する交感神経とリラックスする副交感神経のバランスが乱れて、立ちくらみや動悸、便秘などの症状が現れます。

その他の合併症

3大合併症の他にも、以下のような命に関わる障害をともなう場合もあります。

●虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)
●脳血管障害(脳梗塞・脳出血)
●足壊疽

糖尿病によって血管が傷つくと、動脈が硬くなったり狭くなったりする「動脈硬化」を引き起こします。動脈硬化では、血管内にプラーク(脂肪の塊)や血栓ができやすくなります。血栓や脂肪が血管のなかを流れて心臓の動脈が詰まると、心筋梗塞が引き起こされるのです。心筋梗塞は、心臓に血液が流れなくなることで細胞が壊死する危険な障害です。 

また脳の血管にプラークや血栓が詰まると脳梗塞となり、片方の手足が動かしにくくなる「片麻痺」や意識障害が現れるケースもあります。足の毛細血管が細くなり、血流が十分に行き渡らなくなると、細胞が徐々に壊死する足壊疽を発症します。

糖尿病で行う運動療法とは

青空と白い雲をバックに歩く高齢女性

糖尿病の治療には運動療法がおすすめとされています。ここでは、運動療法の効果や実施内容について解説します。

運動療法の効果

運動によって筋肉を使うと血流が促進され、ブドウ糖が細胞に吸収されやすくなります。さらに運動の継続で筋肉量が増えると、インスリンの効果が高まりやすくなります。これらの影響により、血糖値の低下が期待できるのです。

糖尿病診療ガイドラインによると、運動療法を実施することで血糖のコントロールや心血管疾患のリスクを改善できるといわれています。ただし、運動療法は継続によって効果が期待できるものであり、途中でやめると3日ほどで元に戻るといわれています。

引用:糖尿病診療ガイドライン 2019

運動療法でおすすめの種類・強度

おすすめの運動の種類は「有酸素運動」と「筋力トレーニング」です。有酸素運動にはウォーキングやジョギング、サイクリングなどのさまざまな種類があります。 運動の目安としては「ややきつい」と感じる程度の負荷量は1回で20分以上、週3回以上が理想的です。 

筋力トレーニングでは、腹筋や背筋、スクワットなど足や体幹を中心とした運動を中心に行います。運動の目安としては、週に2〜3回の頻度で1セット10回程度を実施するのが望ましいとされています。運動療法は負荷量が強すぎると血糖値が下がりにくかったり、血圧が上昇してしまったりする危険性があるので、適度な強度を心がけましょう。

運動療法は食後の時間帯がおすすめ

運動療法を行うタイミングは食後1〜2時間後がおすすめです。その理由として、食後で高くなった血糖値の改善が期待できるからです。食後が理想のタイミングですが、それ以外の時間帯で運動を行っても問題ありません。食後の運動療法がむずかしければ、自分の好きな時間帯で行ってみましょう。

運動療法を行う前の準備

運動療法を行う前に、まずは医師に実施してもよいか判断してもらったうえで、運動量を決めましょう。実際に運動療法を行う際は、ケガ予防のために準備運動をしたり、足にフィットした靴を用意したりするのも大切です。また楽しく続けられるように、運動の内容も自分が行いやすいものを選んでみましょう。

運動療法を行うときの注意点

痛がる中高年女性

運動療法は糖尿病に有効な治療法とされていますが、いくつか注意点もあります。ここでは運動療法の中止基準や禁忌について解説します。

運動中に中止すべき基準

運動中に以下のような症状が現れた際は、ただちに中止しましょう。

●動悸がする・脈拍が異常に速い
●胸の痛み・締め付けが出てくる
●関節痛・筋肉痛が出てくる
●気分不快が生じる
●目がかすむ
●めまいがする
●いつもよりひどく疲れる
●低血糖症状(冷や汗や手足の震えなど)が出てくる

糖尿病である以上、上記のような症状が突然現れる可能性もあります。医師とよく相談したうえで、あらためて運動療法の種類や強度について設定しましょう。

運動を控えた方がいいケースもある

運動療法を控える、または制限した方がいいケースは以下のような状況です。

●空腹時の血糖値が250mg/dl(正常値は約70〜100mg/dl)
●脱水症状がある
●感染症がある
●自律神経障害が進行している
●糖尿病網膜症が進行している
●糖尿病性腎症が進行している
●足壊疽が進行している
●心筋梗塞がある
●骨や関節に関連した病気を抱えている

このような状況に当てはまる方は医師とよく相談し、運動療法を実施してもよいか判断してもらいましょう。

日常生活で行える運動療法

屋外で歩く高齢女性

運動療法では有酸素運動や筋力トレーニングの実施が効果的とされています。しかし仕事や家事で、なかなか運動時間を確保できない方もいるのではないでしょうか。ここでは忙しい方でも行えるような、日常生活でできる運動をご紹介します。

仕事をしている方の場合

会社員として仕事をしている方であれば、通勤時の電車やバスを利用するケースも多いと思います。その際に、座席に座らずに立つようにしたり、待っているときに軽く踵上げやスクワットを行ったりするだけでも十分な運動になるでしょう。また会社内ではエレベーターやエスカレーターを使用せずに階段を使う、お昼ご飯を食べた後は散歩するなどの工夫もおすすめです。

主婦の場合

主婦の場合は、家事を行うこと自体がいい運動になっているケースもあります。さらに運動量を高めるためには、以下のようなポイントを意識してみましょう。

●料理中に踵上げを行う
●家事で身体を屈めるときは腰ではなく膝を曲げる
●外出時は車を使わずに歩いたり自転車を使ったりする
●買い物や犬の散歩で出かけるときは少し遠回りをしてみる など

このように、なかなか運動療法を行う機会がとれない方は、スキマ時間を活用したり、なにかの作業中に運動を取り入れたりしてみましょう。

その他の糖尿病の治療法

笑顔で食事をする高齢女性

糖尿病の治療法は運動療法だけでなく「食事療法」と「薬物療法」もあります。この3種類の治療法が、糖尿病を改善するための柱といわれているのです。ここでは残りの治療法である、食事療法と薬物療法について詳しく解説します。

食事療法

食事によって吸収される糖の量を制限したり、栄養バランスを整えたりして血糖値を下げる方法が食事療法です。具体的な内容は、1日の摂取エネルギー量を設定して、炭水化物やタンパク質などの栄養素をバランスよくとれるメニューを指導します。またよく噛んで食べる、規則正しい時間に食事を行う、寝る前に食べないなどの細かい点を意識するのも大切です。

血糖値をコントロールするための方法として最初に優先されるのが、食事療法と運動療法です。この2つはお互いの治療をサポートする役割も担っているため、組み合わせて実施することで治療の効果が高まります。

薬物療法

治療薬の使用によって血糖値を下げる方法が薬物療法です。治療薬によって血糖値を下げるメカニズムは異なり、大きく分けて以下の3種類があります。

1.インスリンの分泌量を増やす薬
2.インスリンの効き目を増やす薬
3.糖の吸収や排泄をコントロールする薬
 
1つ目の薬は膵臓に働きかけて、インスリンを出しやすくします。2つ目は、インスリン抵抗性を低くするための薬です。3つ目の薬では、食後の糖の吸収スピードを遅くしたり、尿によって糖を体外に排泄したりして血糖値をコントロールします。糖尿病患者の症状に適切な治療薬を処方し、血糖値の低下を目指します。

糖尿病の症状を理解して運動療法を実施しよう(まとめ)

血糖測定器を持つ女性

糖尿病の治療には運動療法がおすすめとされており、内容は有酸素運動や筋力トレーニングが推奨されています。症状によっては運動療法を避けるべきケースもあるので、事前に医師に相談して、実施してよいかどうかを判断してもらいましょう。また運動療法だけでなく、食事療法や薬物療法を併用しながら治療を行うことも大切です。糖尿病は進行状況が見えにくい病気でもあるため、発症が判明した時点で早期の治療を心がけましょう。

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