人材の求人依頼 PTOTSTワーカー 0120-51-1151

リハビリで実施するSLRはどんな運動?目的や効果をご紹介

リハビリで実施するSLRはどんな運動?目的や効果をご紹介

更新日:2023年03月30日

公開日:2023年03月30日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
リハビリをするスタッフ

リハビリ場面ではよくSLRの運動を行う機会があると思います。しかし、SLRにはどのような目的で行われ、どのような効果が期待できるのでしょうか。この記事では、SLRの目的や効果、特徴についてご紹介します。SLRについての理解が深まれば、リハビリの選択肢の1つとしてうまく活用できるでしょう。

リハビリで実施するSLRの運動とは?

足のストレッチをしてもらう女性

リハビリで行うSLRとは「Straight Leg Raising」の頭文字をとった言葉で、「下肢伸展挙上」のことを指します。一般的なやり方としては、以下の通りです。

【SLRのやり方】

1. あお向けの状態になって両下肢は伸ばしておく
2. 伸ばした下肢をゆっくりと上げる
3. 下肢を上げた後はゆっくりと床に降ろす
4. 3〜4の運動を繰り返す


リハビリの内容によっては脚を数センチだけ上げたり、床に降ろさずに上げ下げを行ったりするケースもあります。

リハビリで実施するSLRの目的

足の治療をしている様子

SLRはおもに以下の目的で行われます。

1. 筋力トレーニング
2. ストレッチ
3. リハビリの評価


ここではそれぞれの目的について解説します。

1.筋力トレーニングを目的として行う

SLRの目的の1つ目には、下肢の筋力トレーニングがあげられます。SLRの方法はそのままトレーニングにつながっているので、ベッド上のリハビリとして行われるケースも多いでしょう。SLRで働く筋肉は以下の通りです。

● 腸腰筋
● 大腿四頭筋
● 前脛骨筋
● 腹筋


このように、下肢の前面の筋肉や体幹筋に働くのが特徴です。SLRはどこかの筋肉をピンポイントにトレーニングするというより、下肢筋全体にアプローチする傾向にあります。

2.ストレッチを目的として行う

2つ目の目的は、下肢筋のストレッチです。SLRは筋トレだけではなく、可動域改善のために実施することもあります。筋トレとして行うときは患者さんの力で下肢を上げますが、代わりにセラピストによる他動運動で行うのが基本です。SLRでストレッチされる筋肉は「ハムストリングス」や「下腿三頭筋」などがあります。実施例としては、ハムストリングスの硬さによって膝の伸展制限がみられるケースで行います。

3.評価を目的として行う

3つ目の目的は評価としての実施です。SLRは、おもに以下の評価方法として行われます。

● 可動域テスト
● 整形外科テスト
● 筋力のスクリーニング


可動域テストでは、膝関節を伸展した状態の股関節屈曲の角度を測りたいときに実施します。整形外科テストは、腰部の神経症状をみるために行うもので「ラセーグテスト」ともいいます。他動的にSLRを行い、途中で膝下に神経痛が見られたら陽性のサインです。この場合、以下のような疾患が疑われます。

● 腰椎椎間板ヘルニア
● 脊椎すべり症
● 脊柱管狭窄症


筋力のスクリーニングではSLRを自力で行えるか、抵抗に耐えられるかなどを確認して下肢の全般的な筋力をみるケースもあります。

筋力トレーニングとしてのSLRの特徴

足のリハビリをする女性とスタッフ

SLRにはさまざまな目的がありますが、リハビリでは筋トレとして用いられる傾向にあります。ここでは筋力トレーニングとしてのSLR の特徴について解説します。

SLRはOKCの運動なので行いやすい

SLRとは「OKC」の運動なので、筋力が弱い方や高齢者でも行いやすいのが特徴です。OKC(Open Kinetic Chain)とは「開放運動連鎖」という意味で、遠位部の関節を自由に動かせる運動を指します。このOKCの代表的な運動がSLRです。

一方で、OKCの対となる運度には「CKC」があります。CKC(Closed Kinetic Chain)とは「閉鎖運動連鎖」という意味で、抗重力位での関節の動きに連動して、他の関節にも影響が現れる運動です。たとえば、抗重力位で行うスクワットは膝を曲げる際に股関節や膝関節、足関節が連動して屈曲(背屈)するので、CKCの運動に含まれます。

OKCは非荷重での運動なので、CKCと比べると日常動作を反映させるようなリハビリには不向きといえるでしょう。しかし、単関節の運動を行える分、CKCよりも気軽に行えるメリットがあります。

下肢だけでなく体幹の運動にもつながっている

SLRは下肢筋のトレーニングを中心に行うケースが多いですが、それだけではありません。SLRは腹筋にも力が入るので、姿勢を崩さないようにするための体幹筋トレーニングとしても効果的といえます。

この腹筋の活動は「予測的姿勢制御」といわれるもので、上下肢の運動に対して体幹筋が先行して働くことでバランスを取る反応です。この予測的姿勢制御がうまく働かないと、上下肢を動かしたときに体幹がグラつく原因となります。体幹筋や姿勢制御のためのリハビリを行うときは、SLR を行うのも1つの選択肢といえるでしょう。

術後のリハビリとしてもおすすめ

SLRは、下肢の整形外科疾患の術後で行うリハビリとしてもおすすめです。OKCの運動なので比較的負担が少なく、手術によって低下した筋力のトレーニングに向いています。

人工膝関節置換術後の早期にSLRを行った患者さんは、実施しなかった方よりも在院日数と歩けるまでの期間の短縮がみられたという報告もあります。また、変形性膝関節症の方の運動療法としてSLRを行った結果、開始1か月後に膝の痛みやADLの改善なども認められました。このように、SLRは整形疾患の術前・術後のリハビリとしても効果が期待されていることがわかります。

リハビリでSLRを行う際の注意点

リハビリをする女性と男性スタッフ

SLRの実施中は、どのような点に気をつけるべきなのでしょうか。ここではリハビリでSLRを行う際の注意点について解説します。

実施中の血圧に注意する

SLRを行う際は、血圧の上昇に注意しましょう。収縮期血圧が40mmHg、拡張期血圧が20mmHg以上の上昇がみられたら、運動を中止してください。その他にも、運動中に以下の症状が現れた場合も同様です。

● めまいや嘔気、呼吸困難などが現れる
● 脈拍が140回/分を超える
● 1分間に10回以上の期外収縮が現れる


整形疾患の場合は、患部の痛みが出現したら中止して医師の判断をあおぎましょう。これはSLRだけに限らず、運動療法全般的にいえることなので、他のリハビリを行っている最中でも注意が必要です。

腰痛に注意する

SLRを行う際は腰痛に注意しましょう。SLRを行っていると、下肢の重みによって骨盤が前傾方向に引っ張られてしまいます。骨盤が前傾することで腰椎の前弯が増強するので、腰にかかる負担が大きくなり、腰痛が発生しやすくなるのです。とくに下肢に重錘を巻いたり、徒手で負荷をかけたりする際は、さらに注意が必要です。

骨盤が前傾しないようにするためには、反対側の膝を曲げた状態でSLRを行いましょう。膝を曲げることで骨盤後傾位となり、腰の負担軽減につながります。

痛みの種類に注意する

腰痛以外にも、別の部位の痛みにも注意することが大切です。痛みが現れるのは筋肉だけではなく、神経なども関係している場合があります。痛みが現れた際は、どのような感覚なのかを聴取しましょう。

痛みにもズキっとした鋭い痛みや、鈍い痛みなど、さまざまな種類があります。とくにビリビリするような痛みであれば、神経に問題が生じているケースも疑われるので、詳細な評価が必要です。

臥位でできるSLR以外のリハビリメニュー

足を上げるリハビリをする様子

臥位で行える運動は、SLR以外にもさまざまな内容があります。ここではSLR以外の臥位でできるリハビリメニューについてご紹介します。

パテラセッティング

パテラセッティングは大腿四頭筋のトレーニングとして行われるリハビリです。

【パテラセッティングのやり方】

1. 床に足を伸ばしながら座り、上半身は起こす
2. 片方の膝の裏にクッションまたは丸めたタオルを置き、反対の膝は曲げる
3. クッション・タオルを潰すイメージで太ももに力を入れる
4. 3〜5秒ほどキープしたら力を抜いて、再び力を入れる
5. 4の動きを10回繰り返したら、片方の足で行う
6. 3〜5の手順を1セットとして、左右で3セットを目安に行う


大腿四頭筋は膝を伸ばしたり、歩くときに膝折れしないようにしたりする働きがあります。パテラセッティングは関節を大きく動かさないので、変形性膝関節症の方や術後の方など、膝の動きに制限がある場合でも行えるのが特徴です。

ヒップリフト

ヒップリフトは大臀筋のトレーニングとして行われるリハビリです。

【ヒップリフトのやり方】

1. あお向けの状態で両膝を曲げる
2. お尻に力を入れながら腰を持ち上げる
3. 股関節がまっすぐになるまでお尻を上げたらゆっくりと降ろす
4. 2〜3の動きを10回1セットとして、合計3セット行う


大臀筋を鍛えることで、姿勢をまっすぐに保ったり、歩行時の股関節の安定性を高めたりする効果が期待できます。腰に力を入れすぎると腰痛の原因となるので、お尻を締めるようなイメージで行いましょう。また、片足でヒップリフトを行うことで運動の難易度を高められます。

股関節外転エクササイズ

股関節外転エクササイズは、中臀筋のトレーニングとして行われるリハビリです。

【股関節外転エクササイズのやり方】

1. 横向きの状態になり、下側の膝は曲げておく
2. 上側の下肢はまっすぐにして、真上に上げる
3. 30cmほど上げたら3〜5秒間そのままにした後、ゆっくりと降ろす
4. 2〜3の動きを10回行ったら反対側の下肢で行う
5. 2〜4の手順を1セットとして、左右で2セットずつ行う


中臀筋を鍛えることで、歩くときの股関節の安定性向上につながります。下肢を真上に上げるときは、足は真横に向けて行いましょう。実施中は股関節が屈曲したり、足が上側を向いたりしないように注意してください。

ドローイン

ドローインは腹筋のトレーニングとして行われるリハビリです。

【ドローインのやり方】

1. あお向けの状態で両膝を曲げる
2. 息を吸った後、吐きながら腰を下に押し付けるように腹筋に力を入れる
3. 3〜5秒間力を入れたら、力を抜く
4. 2〜3の手順を1セットとして、3セット行う


腹筋のトレーニングによって、体幹のバランス改善につながります。うまく腹筋に力を入れられない方は、腰の下にタオルを置いて、それをつぶすようなイメージを持つといいでしょう。

今回紹介したメニューの回数は目安なので、患者さんの状態にあわせて調整してみてください。

SLRに関連した整形外科テスト

足を曲げるリハビリの様子

整形外科テストはSLRだけでなく、その他にもさまざまな種類があります。ここではSLRに関連した整形外科テストについてご紹介します。

ブラガードテスト

ブラガードテストは、SLRと同じように椎間板ヘルニアや脊椎すべり症、脊柱管狭窄症などを判定するために行う評価です。

【ブラガードテストのやり方】

1. 患者さんをあお向けの状態にする
2. SLRと同じように膝を伸ばしながら下肢を持ち上げる
3. 途中で膝下に神経痛がみられたら、下肢を持ち上げた角度より5°下に降ろす
4. 5°降ろした状態で足関節を背屈位にする
5. 疼痛が増悪したら陽性


ラセーグテスト(SLR)とブラガードテストの両方が陽性の場合、椎間板ヘルニアの疑いがあります。

ボンネットテスト

ボンネットテストも、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などを判定するための評価です。

【ボンネットテストのやり方】

1. 患者さんをあお向けの状態にする
2. SLRと同じように膝を伸ばしながら下肢を持ち上げる
3. 途中で膝下に神経痛がみられたら、下肢をわずかに下げて痛みが消えたことを確認する
4. 痛みが消えたら、股関節を内転・内旋させる
5. 神経痛が増悪したら陽性

FNSテスト

FNS(大腿神経伸展) テストは上位腰椎の椎間板ヘルニアを判定するための評価です。

【FNSテストのやり方】

1. 患者さんをうつ伏せの状態にする
2. 臀部を固定しながら、患側の膝を90°にした状態で持ち上げて股関節を伸展させる
3. 大腿前面に神経痛が出たら陽性

SLRの特徴を理解してリハビリに活用してみよう(まとめ)

リハビリをする女性スタッフ

SLRは運動として行うだけでなく、ストレッチや整形外科テストなどを目的として実施するケースもあります。運動としてのSLRは、術後の患者さんのリハビリとして採用しやすかったり、体幹筋のトレーニングにつながったりなどのメリットがあります。一方で、腰痛や血圧の上昇などを引き起こす恐れもあるので、その点には注意しましょう。今回紹介したSLRの目的や効果を理解したうえで、ぜひ臨床場面で活用してみましょう。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連ジャンル

最新コラム記事